「ライオン」の異名を持つ川崎フロンターレの新戦力が、ついにピッチに姿を現した。この夏に加わったFWバフェティンビ・ゴミスが9月15日、明治安田生命J1リーグ第27節のFC東京戦に先発でデビュー。力のこもったポストプレーを中心に存在感を示し、7試合ぶりの勝利に貢献した。

上写真=ゴミス(右)は、決勝ゴールを挙げたマルシーニョと満面の笑みで喜びを分かち合う(写真◎J.LEAGUE)

■2023年9月15日 明治安田生命J1リーグ第27節(@等々力/観衆20,284人)
川崎F 1-0 FC東京
得点:(川)マルシーニョ

「何かが起こる」と鬼木監督

I was so excited to start with my new players!

「新しいチームメートとプレーを始めることにとても興奮しました」

 バフェティンビ・ゴミスは川崎フロンターレでのデビュー戦を先発で飾った。新しい国での最初のゲームを振り返る口調からは、自然と充実感がこぼれる。

 鬼木達監督は「まだコンディションは100パーセントではない」としながらも、「彼にボールが入ると何かが起こる雰囲気があった」と一流のたたずまいを高く評価している。

 ゴミスは1トップに立ち、フラフラとしている。しかし、ボールを持った味方が顔を上げた瞬間に裏に走り出したり、あるいは下がって受けようとしたりと、オンとオフを組み合わせてボールを引き出す意欲が強く表れていた。そして、ひとたび足元でパスを受けると、背中から激しく押し寄せる相手のプレッシャーなどまったく感じないかのように制御して、味方に預けていく。

 何かが起こる、という意味では、決勝ゴールのシーンがその一つの例かもしれない。

 54分、自陣からのカウンターでマルシーニョが左からドリブルでゴールに一直線、それに合わせてゴミスは中央に入っていった。慌てず騒がず、ゆっくりと。マルシーニョが近づいてくると、足を止めた。マルシーニョのためのスペースを消さないためで、何もしていないように見えながら、そこにいるだけで、マークについていたエンリケ・トレヴィザンが自分を捨ててボールに飛び込んでいくのをぎりぎりまで阻止していた。

 こうしたアクションによって示される感性を絶賛するのが、右インサイドハーフの脇坂泰斗である。

「ボールを収めてくれるのもそうですし、さばくのもうまい選手です。 例えば、自分に3人目へのパスコースが見えているから、そのタイミングで自分にパスを出してほしい、ということも理解して出してくれます。当てやすいし、ただ収めるだけじゃなくてこっちの意図を汲み取る力も経験があると高いんだな、と感じました」

 受け手の次の判断をも先回りして、味方に寄り添うプレーを選ぶことができる。それは、鮮やかなコンビネーションが自慢のこのチームの色に無理なくフィットする予感を漂わせるのに十分だ。

 だからこそ、鬼木監督も周囲への要求を高めている。

「もっともっと全体として(ゴミスを)見てもみてもいいかなと思っています。彼のところに絡んでいくのが重要で、ビルドアップでインサイドハーフやウイングがもっと絡んでいくと面白いのかなと」

 デビュー戦は62分までのプレーとなったゴミスも「私の本来の高いレベルに戻すには、もちろん数試合必要だと思っています」と、あくまで最初の一歩に過ぎないと表明する。でもそれが、このチームにとって7試合ぶりの、2カ月ぶりの勝利につながったわけだから、「とても苦しい状態を打破することに向けて、非常に大事な勝利になりました」と頬も緩む。

 もっと絡んで、もっとつながっていけば、もっと何かが起こる。そのケミストリーの行方が、とにかく楽しみだ。