柏レイソルが苦しんでいる。リーグ戦では8試合勝利から遠ざかり、ネルシーニョ監督から井原正巳監督に指揮権が移っても6戦未勝利。7月1日のFC東京戦も0−1で敗れた。浮上のきっかけをつかめないチームに今、何が必要なのか?

上写真=天を仰ぐマテウス・サヴィオ。前半から勝利への強い思いを感じさせるプレーを見せていたが…(写真◎J.LEAGUE)

次戦は残留を争う湘南と直接対決

 インターナショナルマッチウィークの中断を挟んで再開されたJ1第18節で、柏レイソルはアルビレックス新潟と0―0で引き分け、続く19節ではFC東京に0-1で敗れた。ネルシーニョ前監督を更迭して井原正巳新監督体制になって以降の成績は、2分け4敗とまだ勝ち星をつかめていない。中断前には北海道コンサドーレ札幌戦で4-5、横浜F・マリノス戦では3-4と派手な打ち合いを展開し、特に横浜FM戦は90分を戦って3-2とリードしていながらアディショナルタイムに2点を失ったショッキングな敗戦だった。

 ただ、この2試合で課題だった得点力が改善されたようにも見え、井原監督も手応えを口にしていた。しかし、リーグ再開後は2試合とも無得点、FC東京戦ではマテウス・サヴィオが個人技でシュートまで持ち込む以外にはほとんど得点の臭いを感じさせなかった。

 この試合はFC東京の強度の高いプレーに備えて「アグレッシブなプレーが持ち味」(井原監督)の落合陸をスタメンで右MFに起用。前線で動き回るプレーが効果的な武藤雄樹も先発させて、細谷真大と2トップを組ませるオーソドックスな4―4―2で臨んだ。だが、FC東京の厳しいプレスに後手に回って守勢を強いられ、35分には左サイドでボールをキープした若い俵積田晃太にやすやすとクロスを許し、中央でフリーになっていたディエゴ・オリヴェイラにヘディングシュートを決められた。FC東京もそれほど鋭い攻めを見せたわけではなく、失点はこれですんだが、攻守にわたり圧倒された前半だった。

 後半は落合に代えてスピードが武器の小屋松知哉、武藤に代えて大型ストライカーのフロートを投入し、井原監督の修正とハーフタイムに飛ばされたであろう檄の効果もあってか、攻守とも立ち直りをみせた。だが最後までスコアは動かなかった。

 井原監督は就任初戦の神戸戦後に「カウンターができるときはカウンターで攻める。カウンターでも、(ボールを)保持した形でも点を取れる。この両方をできるチームが強いと思っています」と語り、ボールを握りながらカウンターもできる、臨機応変なチーム作りを目指すとしていた。だが、その言葉が悪い方向で反映されているような状況だ。しっかり守って速い攻めを仕掛けるのか、ボールを保持して相手のほころびを突くのか、前からプレスをかけて高い位置でボールを奪うのか、チームの狙いが見えてこない。しかも、どんな形で攻めにつなげようとその基盤となるべき守備の安定がない。

 井原監督は「ボールホルダーに対して誰が行くのかの徹底や、ちょっとした寄せ、ゴール前で体を張る、相手を近くに置くとか、そういうちょっとしたところ(が疎かになる)での失点が多いので、チームとして徹底していくしかない。マークの受け渡し、受け取りなど、クロスは想定して警戒していたが、「人任せになってしまっている」と失点の要因を語り、「(そういった部分を)徹底して修正して、あとは選手の頑張りや気持ちの強さで解決していくしかないと思っています」と結論付けたが、全体的に守備に対する危機感が希薄に映るディフェンスラインに「ちょっとしたところ」をなくすことができるだろうか。現役時代日本最高のDFだった監督には歯がゆいところだ。二人の外国人が鉄壁のラインを形成している浦和レッズの例を見れば、補強も必要と言わざるを得ない。

 次節は奇しくも残留を争う湘南ベルマーレと対戦する。結果が求められる試合で井原体制の初勝利を挙げることができるか。早急に状況を改善しなければ、J2降格の危機に直面することになる。

取材・文◎国吉好弘