アンドレス・イニエスタがヴィッセル神戸での冒険を終えた。7月1日の明治安田生命J1リーグ第19節、神戸が北海道コンサドーレ札幌を迎えた一戦で、世界のイニエスタが「最後の試合」を戦った。

上写真=イニエスタがついに神戸で最後の試合を戦った(写真◎J.LEAGUE)

■2023年7月1日 明治安田生命J1リーグ第19節(@ノエスタ/観衆27,630人)
神戸 1-1 札幌
得点:(神)マテウス・トゥーレル
   (札)スパチョーク

「ピッチ内外で最大限を出すようにずっと努めてきました」

「5年前に神戸に、このヴィッセルに来ました。そのときには、この旅がどれだけ美しく感動的なものになるか、想像もできませんでした。

 大切な思い出として持ち帰っていくものは、みなさんが、自分たちがここに着いた1日目から示してくれた愛情とリスペクト、その気持ちが本当に大きかったですし、私個人として、そして家族を代表して感謝したいです」

 アンドレス・イニエスタが5年を過ごした日本での最後の試合を終えて、試合後のセレモニーで目を潤ませながら、そして最後には清々しい笑顔をこぼしてサポーターに語りかけた。

 7月1日の第19節、北海道コンサドーレ札幌戦は、イニエスタにとって2018年の5月にヴィッセル神戸の一員になってから、J1では114試合目。今季初の先発出場となった。

「チームに貢献するために自分のベストを尽くします。それだけです」

 黒いキャプテンマークを左腕に巻いてラストマッチに臨むイニエスタの思いは、大好きなこのチームの勝利に貢献することだった。だが、この日は札幌の出足が鋭く、チームとしてなかなかボールをリズミカルに動かせなかった。それでも36分、左サイドで汰木康也とのパス交換からペナルティーエリアに潜り込んでシュートを狙い、スタジアムを沸かせた。

 57分、ついにそのときがやって来た。スタンド全体からのスタンディングオベーションを一身に受けて、佐々木大樹との交代でピッチをあとにした。深々とピッチに向かって一礼して、スペインの至宝の神戸での冒険は終わった。

 試合は26分に札幌のスパチョークに先制ゴールを許しながら、85分、右CKからマテウス・トゥーレルがJ1初ゴールをヘッドでたたき込んで追いつき、1-1のドローに持ち込んだ。この日、スタジアムに集まったのは、27,630人。イニエスタが加入してから、最多だった。

「本当にみなさんは私たちの人生の一部分です。2018年にここに来たとき、このクラブをより大きなクラブにするという約束を果たしに来ました。いま、果たすことができたと感じていますし、ピッチ内外で最大限を出すようにずっと努めてきました。自分がこのクラブに、このチームに感じてきた誇りと同じぐらいの誇りを、みなさんが自分にも感じてくれたことを願っています。

 最後の数カ月は自分にとっても、自分を取り巻く人にとっても苦しい時期でした。キャリアを終えるに当たって、ピッチでプレーしながら引退したいという気持ちがあり、その気持ちに従って次の一歩を踏み出そうと思っています。

 自分はここに来たときよりもずっと、選手としても人としても成長したと感じています。そのことに関しては自分のチームメート、元チームメート、スタッフのみなさん、ここにいる素晴らしいファンのみなさん、そしてJリーグ、日本のファンのすべてのみなさんに感謝しなければいけないと思っています。みなさんのおかげで成長し続けることができました」

 そして、最後の言葉。

「今日、お別れを言う日が来ましたが、自分はさよならという言葉は好きではありません。また会いましょう、がお別れの言葉だと思っています。私たちはまた日本に戻ってきますし、ここは我が家のようなところです」

 その言葉を示すように、最後にゴール裏で見守るサポーター席に自ら上がっていって、いつまでも別れを惜しんでいた。そして「神戸讃歌」の大合唱。