J1リーグ第16節で鹿島アントラーズは浦和レッズと対戦した。結果は0−0に終わったが、見どころの多い試合だった。4月23日の第9節のアルビレックス新潟戦以降、カップ戦も含めて、9戦負けなし。鹿島は今、上昇するための条件をそろえている。

上写真=浦和の守備陣と見応えのある攻防を繰り広げたFW鈴木優磨(写真◎Getty Images)

堅い守備と自信を深めたビルドアップ

 鹿島アントラーズは4日、今季最多となる4万5575人の観衆を集めた埼玉スタジアムで浦和レッズと対戦。0―0で引き分けた。ここ3試合連続の引き分けとなったが、第5節から4連敗するなど苦しいスタート切った後、第9節から5連勝を飾って復調の兆しを見せていた。

 第9節のアルビレックス新潟戦から連勝が始まったのは、この試合から鈴木優磨と2トップでコンビを組むFWに垣田裕暉、両サイドMFにはそれまでのサイドアタッカータイプではない名古新太郎と仲間隼斗を今季初めて先発で起用、序盤戦で採用していた4‐3‐3ではなく、鹿島の伝統的なスタイルでもある4‐4‐2に変えたことがきっかけだった。

 新潟戦で6試合ぶりとなる勝利を挙げると、ハードワークと球際の厳しさ、切り替えの早さも高まり、5連勝の間は無失点と、鹿島らしいディフェンスの堅さを取り戻していた。

 それでも前節ではサガン鳥栖と対戦し、アディショナルタイムに鈴木のゴールで追いついたものの2点を失い、さらにこれまでも常に激しい戦いを繰り広げてきた浦和とのアウェーゲームで相手が好調なこともあって、この日は「中盤の構成、それぞれのタスクを少し変えて」(岩政大樹監督)臨んだ。

負傷から復帰した佐野海舟をボランチとしてディエゴ・ピトゥカと並べ、ここまでボランチでプレーしてきた樋口雄太を左サイドMFに移した。守備の際には4‐4‐2だが、攻撃に移ると樋口は中央に入り、空いたスペースを左サイドバックの安西幸輝が活用する構成となっていた。

 この変更が奏功して前半は鹿島が主導権を握った。ボールは良く動き、11分には右サイドで広瀬陸斗を起点に数人が絡んでワンタッチ、ツータッチでパスをつなぎ、3列目から走り込んだ佐野がシュートするなど鋭い攻撃を展開した。しかし、浦和の守備も堅く、24分に迎えた最大のチャンスも鈴木のシュートがGK西川周作の正面を突くなど、得点には至らなかった。

 後半には浦和が対策を講じてきたことと、岩政監督自身が「レッズは20得点のうち15点を後半に挙げており、自信を持っている」と後半の反撃を想定していたように押し込まれる展開になる。だが、「ゴール前のところは外さずしっかりマークについて、GKを含めてコースを消して、ある程度プランどおり守り切った」と無失点で切り抜けた。

 ディフェンスに関しては、植田直通と関川郁万のCBコンビがともに前に強いハードな守りを得意とするタイプで、ラインの統率やコンビネーションに懸念もあったが、無失点試合を重ねるうちにプレーが落ち着きチーム全体の守備が安定感を増している。大崩れする心配はなさそうだ。

 攻撃面でも、ここまでセットプレーや鈴木の個人的な奮闘に負う部分が大きかったが、この日前半に見せた展開力は収穫だろう。岩政監督も「ビルドアップのところは今日初めてぐらいですね。あれだけ自信を持ってやれるようになった」と手ごたえを感じていた。堅守をベースに攻撃に変化が加われば、鈴木をはじめ垣田、知念慶ら決定力のあるストライカーがいるだけに、さらに勝ち点を積み上げることができるはずだ。

 黒星が先行していたころには厳しい表情しか見せなかった岩政監督が、この日の会見では手ごたえを語る際に表情も崩れた。コメントにも本来の饒舌さが戻り、その変化にもチームの状態が上向いていることが表れていた。

取材・文◎国吉好弘