浦和レッズとサンフレッチェ広島の上位対決は激しい試合になった。結果は浦和が2−1で逆転勝利を飾ったが、筆者が注目していたのは2人のM Fの対決。それぞれ印象的なプレーを見せたが、より強いインパクトを残したのは1得点1アシストという数字を残した浦和の伊藤敦樹だった。

上写真=アディショナルタイムに決勝ゴールを決めた伊藤敦樹(写真◎Getty Images)

逆転勝利の立役者になる

 浦和レッズはアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝を戦ったために延期された第11節のサンフレッチェ広島戦を5月31日に行い、0-0で迎えた後半に先制点を許しながら終盤に追い付き、アディショナルタイムには伊藤敦樹が決勝ゴールを決めて2-1と劇的な逆転勝利を挙げた。これでまだ未消化試合を1試合残しながら広島を抜いて4位に浮上している。

 この試合で注目されたのは両チームのフィールドプレーヤーでは唯一6月の日本代表戦のメンバーに選ばれた広島の川村拓夢だったが、より活躍が目立ったのがほぼ同じポジションでプレーする浦和の伊藤だった。

開始6分に前線へ飛び出してアレクサンダー・ショルツからのロングフィードを巧みに収めるとホセ・カンテへ絶好のクロスを送って最初のチャンスを生み出した。その後も中盤で幅広く動いて攻守に貢献。後半リードを許す展開になるが、67分に興梠慎三ら3人が交代出場すると流れが変わり、72分には関根貴大からのパスを受けるとボックス内に走り込んだ酒井宏樹へのスルーパスを通して同点ゴールをアシストした。

 そして、アディショナルタイムに入っての92分には、自ら左サイドで受けたボールを展開して、右サイドの酒井からのクロスが入るとブライアン・リンセンのヘッドでの折り返しに飛び込んでボレーで合わせて決勝ゴールを蹴り込んだ。1点のビハインドを覆した逆転勝利に1ゴール1アシストでヒーローとなった。

 試合後には「チーム全員が最後まで諦めないで戦った結果だったと思います。大事な試合で決めることができてうれしい。あのゴールはクロスが上がった時点でブライアンがフリーだったのが見えて、目も合ったので落としてくれると信じて飛び込みました。うまく入ってくれてよかった」と相好を崩した。

 この試合を視察した日本代表の森保一監督も「もちろん注目している選手の一人ですし、今日は非常に良かった。ダイナミックでエレガントでもあって、我々コーチングスタッフでの議論にも上がっています」と今後の代表入りも示唆している。

 注目の川村もこの日は通常のボランチではなく2シャドーの一角としてスタートし、先制ゴールが生まれたシーンでは野津田岳人からの縦パスをドウグラス・ヴィエイラがフリックして流したボールを受けて持ち込み、利き足ではない右足で放ったシュートしてこれをGKがはじいたところを森島司が押し込んだ。後半途中からプレーしたボランチとしてのパス能力に非凡なものを持つだけでなく、シュートの感覚も優れ得点に絡むことができる強みを発揮した。

 本人は試合に敗れた上に伊藤とマッチアップしたシーンでは競り負けることが多かっただけに「自分のやりたいプレーをやられてしまった。力負けです」と悔やんでいたが、日本代表に選ばれたポテンシャルは示していた。

 川村は23歳で183センチ、72キロ、一方の伊藤は24歳、185センチ、75キロとともに伸び盛りで、体格にも恵まれ、走力もある大型MF。今後もさらにチームの中心としてプレーするとともに日本代表の戦力としても期待したい。

取材・文◎国吉好弘