5月14日に国立競技場で行われる鹿島アントラーズ対名古屋グランパスは、『Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ』と銘打たれている。同カードは1993年5月16日のJリーグ開幕戦と同じ顔合わせであり、記念試合にふさわしい一戦ということができるだろう。ここでは30年前の『衝撃』を振り返る。ここからJの歴史は始まったーー。

上写真=ジーコがゴールを決め、歓喜の疾走!(写真◎サッカーマガジン)

アルシンドもいきなり2ゴール!

 30年前、カシマスタジアムで行われた鹿島対名古屋は、開幕戦ということもさることながら2人のスーパースターの対戦ということで注目された。ブラジル代表の10番を背負い、サッカーの神様と称されたジーコと1986年のメキシコ・ワールドカップで得点王に輝いたイングランド代表のリネカーの競演である。

 世界的なプレーヤーが互いに持ち味を出し合うことが期待されていたが、試合は意外な展開になる。日本サッカー発展のために91年に引退を撤回して住友金属(鹿島の前身)で現役復帰を果たした当時40歳のジーコが、試合を支配する。

 25分、サントスのパスを受けて右前方のアルシンドに出したパスは相手DFに阻まれたが、そのこぼれ球に反応。右足を振り抜き、ジーコが鹿島のJリーグ第1号を刻む。

 その5分後には、今度は代名詞でもあるFKを直接、沈めてみせた。左45度から右足で狙うと、ボールはゴール左上のバーの内側に当たり、そのままゴールイン。ジーコを中心にまとまった鹿島は、素晴らしい連動とアグレッシブなプレーで前半のうちに2−0とすると、後半に入ってもその勢いを継続した。

 53分にはアルシンドがチームの3点目を奪うことに成功。後方からライン裏に送られたボールをジーコが相手DFのクリアよりも早く反応して頭でアルシンドへとつなぎ、同胞のJ初ゴールをお膳立てした。63分、ジーコがそのアルシンドへ中央からパスを送り、ゴール前にタイミングよく走り込み、クロスをボレーで叩き込んだ。

 最後は64分、アルシンドが鮮やかなループシュートを決め、鹿島が5−0とし、名古屋にほぼ何もさせず快勝した。開幕戦で後世に語り継がれるハットトリックを達成したジーコは「3ゴールは3人の息子へのプレゼント」と語り、勝利を喜んだ。

「歴史の1ページで、勝利できて最高です。今日のようにスピーディーに進めていければ、今後もいけるかなと」

 そう語ったのは当時、鹿島を率いていた宮本征勝監督だった。ジーコやアルシンドの守備の負担はサントス、本田泰人、石井正忠のMF陣の献身で軽減し、最終ラインでは大野俊三、秋田豊らが強力な壁を築いた。攻守のバランスが取れていた鹿島はその後、宮本監督が予見した通り、快進撃を見せて、1stステージに優勝。注目の開幕戦で勝利を収めたことで、チームが自信を深めたことが大きかった。

 あの5−0の衝撃から30年の時を経て、記念試合として行われるのが今回の対戦だ。シーズン序盤に苦しんでいた鹿島は4連勝を飾り、6位まで順位を上げてきた。一方の名古屋は今季好調で現在3位。ここまで1敗しか喫しておらず、リーグ最小失点の『負けないチーム』としてこの一戦に臨む。

 はたして今回は、どんな結果になるのか。注目の試合は今日14日、13時30分に国立競技場でキックオフされる。

文◎佐藤景

■1993年5月16日 Jリーグ開幕戦(@カシマスタジアム/観衆10,898人)
 鹿島 5−0 名古屋
 得点:(鹿)ジーコ3、アルシンド2

監督:宮本征勝(鹿島)、平木隆三(名古屋)/SUB:(鹿)GK千葉修、FW黒崎比差支、真中靖夫、(名)GK石川研、DF中西哲生、飯島寿久