AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦が6日、埼玉スタジアムで行われた。敵地での第1戦でアルヒラルと1−1と引き分けていた浦和レッズは堅い守備と効率の良い攻撃で1−0の勝利を収め、2試合合計2−1として3大会ぶり3度目の優勝を飾った。

上写真=歓喜の表情を見せる浦和の選手たち(写真◎小山真司)

■2023年5月6日 AFCチャンピオンズリーグ決勝第2戦(@埼玉スタ/観衆53,374人)
浦和 1−0 アルヒラル
得点:(浦)オウンゴール

歴史と経験が生かされた戦いぶり

 敵地で行われた第1戦を1ー1で引き分け、アウェーゴールを手にし、過去2回の優勝時と同様のシチュエーションで埼玉スタジアムに戻った浦和は、アジア制覇に向けて優位な状況を整えていた。

 ただ、0−1で敗れるようなことになれば、つかみかけたタイトルはその手からこぼれて落ちてしまう。優位であるのは間違いないが、安心できる状況でもない。前日会見ではスコルジャ監督も「1戦目の結果は考えないほうがいい」「0でおさえ、点を取って勝ちたいと思います」と、受け身にならずに勝利を目指すと話していた。

 果たして浦和は第1戦と同じスタメンで試合に臨んだ。初戦で足を痛めて交代していた酒井も右サイドバックでプレー。厳しいアウェーを戦い抜いた11人で運命の第2戦をスタートさせた。

 前回同様、浦和は立ち上がりからアルヒラルにボールを握られた。押し込まれた中でのプレーを強いられ、20分過ぎからは連続でCKを与えるなど連続してピンチを招いた。だが、集中した守備とGK西川の好守でしのぐと、中盤でのボール奪取から攻めに転じる回数を増やしていく。

 30分には複数人が絡んで右サイドを攻略。酒井のクロスに興梠がフリーで飛び込んだが、ボレーシュートはクロスバーを直撃し、ネットを揺らすことはできなかった。浦和は時間が進むにつれてチャンスを生み始めたが、アルヒラルも浦和のチャンスの直後に決定機をクリエイトしてみせた。サイドチェンジを使いながら浦和守備陣を揺さぶってはゴールに迫り、42分にはカリージョが強烈なミドルを放つ。西川が右手でなんとか弾き出したものの、守備陣が下がり気味になってスペースを空けてしまった浦和にとっては極めて危ない場面だった。

 アルヒラルやや優勢だった前半を終えて迎えた後半、浦和は第1戦と同様に流れを変えるべく、積極的に前に出るようになる。すると、最初のチャンスをゴールにつなげてみせる。48分のこと。敵陣中央で得たFKの場面で岩尾がボックス左へボールを供給。ホイブラーテンがヘッドで折り返すと、ゴール前に詰めていた興梠に合わなかったものの、戻りながらの対応を強いられた相手MFカリージョの足に当たってゴールイン。浦和は欲しかった先制点と後半のスタート直後にスコアした。

 ますます攻めに出るしかなくなったアルヒラルは当然ながら攻撃姿勢を強めたが、浦和も鋭い出足でボールを奪い、背後を突いて簡単には攻めの形を作らせない。強い風の影響でプレー選択が難しい中でも、浦和は勝負を決める追加点を、アルヒラルはゲームを振り出しに戻る1点を目指して一進一退の攻防が続いた。

 試合の残り時間が5分を切ると、スタジアムを真っ赤に染めた大観衆の声援がひと際大きくなり、浦和を後押しした。1点を奪ってまずは延長に持ち込みたいアルヒラルも圧力を強めていたが、90分にイグアロが放ったシュートは西川がスーパーセーブでゴールを阻止。この日、再三にわたって好プレーを見せていたベテランは、改めてその力を証明したと言える。

 その西川を中心に今季、J1でも強みとしている堅い守りは、ACL決勝の舞台でも発揮された。ショルツとホイブラーテンの2CBはちょっとやそっとでは崩れない。そしてサイドバックは1対1で強みを見せ、中盤も前線もプレスをサボらない。果たして試合は、1−0で決着した。2試合合計は2−1。浦和はアルヒラルに2019年に決勝で敗れた雪辱を果たし、3度目のアジア制覇を達成した。

 耐えるべき時間にしっかり耐え、機を逃さずにネットを揺らすその戦いぶりは、トーナメントのなんたるかを知るチームだからこそといえるかもしれない。アウェーの第1戦に臨む前、ACLの経験豊富な興梠や西川は、ACL決勝未経験の選手たちに押し込まれることになっても焦れることなく粘り強く戦うように伝えていた。そしてアウェーゴールを持ち帰った第2戦の前には、決して受け身にならないことの重要性を伝えている。

 クラブが積み重ねてきた歴史と、その歴史を作ってきた選手たちの経験が生かされた優勝と言うこともできるだろう。

 決勝第1戦では興梠がチームを救う同点ゴールをあげ、第2戦のプレー・オブ・ザ・マッチは好セーブ連発の西川が受賞した。そしてMVPには4月に負傷しながら決勝の2試合に照準を合わせて調整し、右サイドで圧倒的な存在感を示した酒井が選ばれた。3度の優勝は、Jクラブ最多。この誇るべき結果は当然、チーム全員で勝ち取ったものだが、経験豊富な彼らの存在も欠かせないものだった。

・浦和出場メンバー:GK西川周作、DF酒井宏樹、アレクサンダー・ショルツ、マリウス・ホイブラーテン、明本考浩、MF伊藤敦樹(86分:柴戸海)、岩尾憲、大久保智明、小泉佳穂(72分:安居海渡)、関根貴大(86分:荻原拓也)、FW興梠慎三(72分:ホセ・カンテ)

・アルヒラル出場メンバー:GKアルマユーフ、DFアブドゥルハミド、チャン・ヒョンス、アルブライヒ、アルブライク(80分:アルヤミ)、MFカンノ(87分:アルジュワイル)、オタイフ(68分:アルダウサリ)、カリージョ、ミシャエウ、FWイグアロ、アルハムダン(68分:アルシェハリ)