上写真=松木玖生は開幕戦以来のリーグ復帰でフル出場。ピッチ内で解決策を探った(写真◎J.LEAGUE)
■2023年4月9日 明治安田生命J1リーグ第7節(@味スタ/観衆20,949人)
FC東京 2-2 湘南
得点:(F)仲川輝人、エンリケ・トレヴィザン
(湘)杉岡大暉、タリク
安部柊斗の投入で好循環へ
湘南ベルマーレは3-3-2-2の陣形をピッチに描き、町野修斗と阿部浩之の2トップ、タリクと平岡大陽の2列目の4人が絡み合いながら、サイドも使って攻撃を仕掛けてくる。4-3-3がオリジナルのFC東京は、中盤では東慶悟がアンカーに入り、小泉慶と松木玖生がインサイドハーフに立った。湘南の2トップは木本恭生とエンリケ・トレヴィザンのセンターバックが見張るが、その後ろの2人にどう対応するか。
開幕戦以来のカムバックとなった松木は、小さなズレが続くミッドフィールドを立て直そうとしていた。
「湘南とやるときは(相手の)アンカーのところで回されるケースが多いので、自分だったり後半は(安部)柊斗くんが入って、そこをつぶしていきました」
湘南は前半は永木亮太が、後半は奥野耕平がアンカーに入って、ボールを前後左右に動かすコントロール役を担っていた。松木はそのテンポを断ち切る作業に集中しつつ、湘南の攻撃のスクエアをどう消し込むか、小泉と話し合っていった。
「2トップの後ろの2枚が流動的に動くチームなので、そこについていきながら、フォワードの2人にくさびのパスが入ったときにプレスバックできるようにしようと話し合っていました」
小泉も意識を合わせる。
「守備のときにはボランチを2枚にしました。相手が斜めにくさびをつけてくるのは予想していて、そこでこちらがアンカー1人で対応するのはきついので、なるべく2枚になって守備をしようと話し合っていました」
松木が相手のアンカーをチェックし、その後ろに入ってくるボールは、「玖生を前で生かしたいので自分がバランスを取って」とポジションを下げた小泉が、東と連動して締める構図だ。
松木と小泉のコミュニケーションでもう一つ擦り合わせたのが、攻撃について。松木が説明する。
「ボールもなかなかうまく回っていなかったので、ボールを回すための立ち位置を修正しようと話しました。(センターフォワードの)ディエゴ(オリヴェイラ)がが孤立してしまうところも多かったですし、 自分と慶くんのポジショニングがちょっと広い分、なかなかパス交換できないところもあったので、そこは修正していかなきゃと」
小泉が松木と東のラインを行ったり来たりする中で、どうしても適切な距離や角度を保てないでいた。松木が気を配ったのが距離感のこと。
「もう少し近づいた方がいいときもあるし、近づくだけではなくてある程度の距離感を保ちながら、しっかりパスが通るポジショニングを取るところは大事だと思います」
そのミッドフィールドに手を加えたのは、63分のことだった。30分に仲川輝人が先制しながら、54分と59分に連続失点を食らう。そこで3枚替えを敢行して、中盤では安部が東に代わって投入された。ここで松木と小泉が中盤の底に2枚並び、安部がトップ下に入る4-2-3-1の陣形に整える。安部はまず守備のタスクを実行した。
「自分がトップ下に入ったので、ボールを回す中心になっていた相手のアンカーの選手を突いていこうと意識していました。湘南がうまくいくようなシーンがあまりなかったと思うので、うまくできたのかな」
すると、前への推進力も生まれてくる。
「自分が入ってフォーメーションも変わりましたけど、自分が間で受けて前を向いてアダイウトンに出すシーンもありましたしね。(右ワイドの渡邊)凌磨くんも中に入ってくる選手なのでボールの循環が良くなったし、自分たちがフレッシュでボールも素早く動かして、みんなが動いて、ということができたんじゃないかな」
後半から登場したその渡邊も「前半と後半では違うサッカーをしていた」と手応えを口にしている。63分の交代策とその2分後のエンリケ・トレヴィザンの同点ゴールによって、一気にオープンな展開になったこともあるが、試合が活性化したのは間違いない。
4-3-3がいいか、4-2-3-1がいいか、という単純な比較で語ることができない話だが、少なくともこの湘南戦における選手たちの実感は、後者に好印象。さて、ここからアルベル監督と青赤の選手たちはどこに向けて進んでいくだろうか。