4月9日の明治安田生命J1リーグ第7節で、FC東京は湘南ベルマーレを相手に2-2の引き分けに終わった。先制し、一度は逆転されながらも追いついたドロー。ホームでは負けなしを継続したものの、内容は選手の誰もが渋い顔をして振り返る。ようやく主力が揃いつつあるここから、高みに到達することはできるか。

上写真=FC東京は仲川輝人が先制ゴール。中村帆高、松木玖生と「復帰組」とともに崩した(写真◎J.LEAGUE)

■2023年4月9日 明治安田生命J1リーグ第7節(@味スタ/観衆20,949人)
 FC東京 2-2 湘南
 得点:(F)仲川輝人、エンリケ・トレヴィザン
    (湘)杉岡大暉、タリク

「人数はいるんですけど、人につけてない」と松木玖生

「今日の試合から続々と復帰してきて、やっと十分な戦力で戦えると思っています。コンビネーションについては、選手一人ひとりのクオリティーは高いので、イマジネーション、想像力で合わせられると思う」

 先制ゴールを決めた仲川輝人は、さあ、ここから、の思いを口にする。U-20日本代表の活動でチームを離れていた松木玖生が、開幕戦以来の先発復帰。右大腿二頭筋筋挫傷の中村帆高は、負傷した3月12日の第4節以来の出場を先発で果たした。後半開始からは、2月26日の第2節に左外傷性腎損傷を受けた渡邊凌磨がピッチに帰ってきて、63分には、開幕戦で右大腿二頭筋筋挫傷を負った安部柊斗もピッチに飛び出していった。

 日本代表デビューを果たしたバングーナガンデ佳史扶は右膝膝蓋骨骨挫傷でまだ復帰できていないが、主力級が戻ってきたパワーが形として現れたのが、30分の先制ゴールだ。

 右サイドで中村が右外の仲川につけてそのまま内側のレーンを走り抜けると、それをダミーに使った仲川は中にドリブルしながら縦に角度をつけたパス、受けた松木が抜け出して右足でシュートを放つと、GKが弾いたこぼれ球を仲川が押し込んでいる。

 一方で、復帰組が失点にも絡んだ。59分に1-2と逆転されたゴールは、右サイドで中村と渡邊のところで引っ掛けられてショートカウンターから決められたもの。渡邊は「あれはやってはいけない」と自らに鋭く責任を突きつけている。

 それでも、中村は63分に長友佑都に代わるまで右サイド深くまで進出して攻撃に絡み、渡邊は投入から5分後には左足で、「右を狙う素振りを見せて左を狙った」とテクニカルなショットを見舞った。これは「思ったより左に曲がりすぎてしまった」ために左ポストを直撃するが、それ以外にもボールを収めることのできる技術を生かして、散漫になりがちだった攻撃のテンポをまとめていった。

 松木はリーグ戦2試合目の出場で最後まで走りきった。悔やんだのは2つの失点だ。54分にショートコーナーから中野嘉大のミドルシュートを杉岡大暉にコースを変えられて同点とされると、上記の通り、その5分後にはショートカウンターで右サイドを割られ、阿部浩之の折り返しをタリクに押し込まれた。

「あの2失点は改善しないといけないところ。ああいう時間帯で2失点してしまうと士気も落ちるし、もちろんそこからやってやろうという気持ちにはなるけれど、ああいう失点は減らしていかないと、やはり上位に食い込むことができないと改めて感じました」

 その理由は、失点の中身。

「人数はいるんですけど、人につけてない。そういう場面は前半にあったので、そこを直していかないといけないですね」

 確かにどちらもボックス内に人がいたものの、先に相手に触られている、という共通点がある。そのディテールへのこだわりが、松木の闘争心に火を付ける。

 ボールがうまく循環せず、中途半端にボールを動かしては引っ掛けられてノッキングする90分。「東京改革」に挑むアルベル監督2年目のシーズンは、簡単ではない序盤を過ごしている。そこで、2019年と22年にJ1を制した経験を持つ仲川は、難しい時期を乗り越える方法をこんなふうに表現している。

「特別に何かをしていこうということはなくて、つないでいくところは徹底してやるべきだと思うし、あとはもう選手個人個人の感覚で崩せる部分だと思うので、そこは楽しくやることですね」

 戦術的に細やかに設定される決まりごとをなぞることに加えて、楽しんでプレーしていけるかどうか。そこにかかっている、というわけである。