明治安田生命J1リーグ第7節が9日、各地で開催された。味の素スタジアムではFC東京と湘南ベルマーレが対戦した。前半、FC東京が先制したものの、後半、主導権を握った湘南が2点をスコアし、逆転に成功。直後にホームチームが追いついて、試合は2−2のドローに終わった。

上写真=序盤からペースを握ったのは湘南。FC東京は苦しみながらもドローに持ち込んだ(写真◎J .LEAGUE)

■2023年4月9日 明治安田生命J1リーグ第7節(@味スタ/観衆20,949人)
 FC東京 2−2 湘南
 得点:(F)仲川輝人、エンリケ・トレヴィザン
    (湘)杉岡大暉、タリク

ボールを大切にできないと苦しむ(アルベル監督)

 前半の立ち上がりは機能していなかった右サイドからゴールが生まれた。右ウイングの仲川、右サイドバックの中村帆、右インサイドハーフの小泉の立ち位置が重なり、攻撃が滞るケースが散見していたが、それ以前のプレーが前振りだったのか、と思うほど鮮やかなコンビネーションを見せる。

 仲川が幅を取り右サイドライン側でボールを引き取ると、中村帆がインナーラップで駆け上がって相手を引きつける間にインサイドへボールを運ぶ。ボックス外で松木がパスを受けて、そのまま進入してシュート。GK富居が弾いたところに詰めていたのは、一連の攻撃で「運び屋」として貢献していた仲川だった。GKの位置を冷静に確認し、ボールを巧みに蹴り込んだ。

 先制点が生まれるまで、否、先制点が生まれた後も、試合の主導権を握っていたのは湘南の方だった。ボールを積極的に動かし、敵陣で縦パスを刺して攻撃を展開。ホームチームがやりたいサッカーをそのままやってのけていた。実際、プレーエリアも敵陣、すなわちFC東京側であることが多く、ボールを握ってゲームをコントロールした。

 湘南が追いつくのは54分のことだ。俵積田に代わって渡邊が入り、中央に入り込んでボールを引き出せるようになるかと思われたFC東京だったが、前半と変わらずボールをうまく前進させれず、湘南にボールを奪われて自陣でのプレーを強いられる。左CKから中野が放ったシュートをボックス内で杉岡が触ってコースを変え、同点に追いついた。

 さらに59分、敵陣でボール奪取に成功した湘南は、町野のパスを左サイドで受けた阿部のダイレクトクロスにタリクが飛び込み、勝ち越しに成功。ボール奪うという点でも湘南は持ち味を発揮してみせた。

 湘南優位な展開でゲームは60分を超えた。そのままアウェーチームが押し切るかと思われたがスコアは再び動くことになった。65分、湘南陣内中央で得たFC東京のFKの場面でキッカーの松木が左サイドへのパスを選択。途中出場のアダイウトンが浮き球を送ると、エンリケ・トレヴィザンが打点の高いヘッドを一閃。FC東京が2−2とスコアを振り出しに戻した。

 その後、試合はオープンな展開となり、最後まで攻め合う中で互いにチャンスも迎えたが、勝ち越しゴールを生むことはできず。同点のまま試合終了の笛を聞くことになった。

 両チームの内容を比較すれば、狙いをピッチで表現できたのはアウェーの湘南の方だろう。ただ交代カードでゲームを動かすことができず、後半に勝ち越した勢いを結果につなげることができなかった点は悔やまれる。一方のFC東京はケガ人が多いこともあるが、なかなかボールを前進させることができず、受け身になる時間帯が多かった。終盤に勢いを得たものの、ゲームの主導権は握れずじまい。タレント力で同点に持ち込んだ印象で、安定的に結果を出すためにスタイル変更に踏み出した2年目のシーズンとしては、悔しい内容になった。

 苦しい戦いが続くホームチームの指揮官、アルベル監督は次のように試合後に語った。

「私はパスを含め、テクニックを表現した形で試合を支配したい。ただ、そこの部分で苦しんでいるという面があります。正直、トレーニングでは日に日に良くなってきていますが、試合で表現することに苦しんでいる。我々のスタイルに適応し生きれていない選手がいるのはあるかと思います。私は監督として、将来、自分がいるクラブに何かを残して去りたい。なぜなら私が愛しているこのスタイルは、クラブに、アカデミーに多くのものをもたらしてくれると信じて疑わないからです。様々なスタイルがあり、全てリスペクトしますが、ある特定の選手が揃うと機能するスタイルもあります。そういうスタイルの場合は安定感のある結果をもたらすことはできないと思います。私が期待している、私が愛しているこのスタイルは安定感を持った成功をもたらしてくれると信じています。その分、ボールを大切にするところをしっかりできなければ、今日の試合のように苦しんでしまうというのがあると思います。
 私はアイディアを明確に持っています。昨年はよりフレキシブルに対応したというのがありましたけれども、2年目の今年もフレキシブルに対応していたら、何も変えることはできないと思っています。まだトレーニングからこだわり続けてやっていきたいと思います。細かいところの修正を重ねていきたい。この苦しみをしっかりと乗り越えることによって、それプラスさらなる選手補強を期待したいと思いますし、このスタイルに適した若い選手が成長してくれることを期待しています。様々な部分が同時進行で良い方向に進むことによって、そのことでこのクラブが成功に辿り着けたら嬉しく思います」

 指揮官は、引き続きスタイルに習熟に努めると強調した。

・FC東京出場メンバー:GKヤクブ・スウォビィク、DF中村帆高(63分:中村帆高)、木本恭生、エンリケ・トレヴィザン、徳元悠平、MF小泉慶、東慶悟(63分:安部柊斗)、松木玖生、FW仲川輝人(63分:アダイウトン)、ディエゴ・オリヴェイラ、俵積田晃太(46分:渡邊凌磨)

・湘南出場メンバー:GK富居大樹、DF舘幸希、大岩一貴、杉岡大暉、MF石原広教(90分:岡本拓也)、永木亮太(46分:奥野耕平)、中野嘉大、タリク(81分:山田直輝)、平岡大陽(90分:若月大和)、FW町野修斗、阿部浩之(86分:鈴木章斗)