開幕から2連敗を喫していた浦和レッズが、3戦目のセレッソ大阪戦で待望の今季初勝利を挙げた。20年ぶりにホーム開幕戦の会場となった浦和駒場スタジアムは、劇的な逆転勝ちに大いに沸いた。ドラマの主役となったのは、大卒2年目のジョーカーである。

上写真=値千金のゴールでチームに勝利をもたらした安居海渡(写真◎J.LEAGUE)

■2023年3月4日 J1第3節(@浦和駒場/観衆18,437人)
 浦和 2−1 C大阪
 得点:(浦)アレクサンダー・ショルツ、安居海渡
    (C)オウンゴール

正直、悔しい気持ちもありました

 ずっとチャンスを待ちわびていた。3戦目で今季初めてのベンチ入り。1-1で迎えた77分、浦和の安居海渡は途中出場でピッチに入る前にイメージを膨らませた。

「自分で点を決めようと」

 マチェイ・スコルジャ新監督に用意された持ち場は、本来のボランチではなく、トップ下。ポーランド人の指揮官から求められた仕事内容は、はっきりしていた。勝ち越しゴールを奪うこと。86分、関根貴大からのパスを受けると、迷いなく右足を振り抜いた。

「シュートの意識を強く持っていたから決めることのできたゴールだったと思います。ボールが来たら、打とうと思っていました。正直、コースも見えていなかったです」

 ただ、自信だけは持っていた。トレーニングから1本のシュートも無駄にしなかった。集中力を高め、ゴールネットを揺らすことにこだわってきたのだ。フィニッシュには手応えも得ていたという。

「きょう、試合で結果として出ました。少し時間がかかりましたけど……」

 大卒2年目を迎え、1年越しのJ1初ゴール。はにかむ笑顔には充実感が漂っていた。昨季はリーグ戦6試合に出場し、無得点。練習での努力はなかなか報われず、一時期は腐りかけたこともあった。「正直、悔しい気持ちはありました」。それでも、経験豊富な先輩たちに声を掛けられ、何とか前向きに取り組んできた。

 今季こそは「チームの主軸となる」と心に誓っている。まだシーズンは始まったばかり。すぐに次の試合を見据えていた。3月8日は、ルヴァンカップの初戦。アウェーで湘南ベルマーレと戦う。スタメン奪取に向けて、自らの課題を向き合いながらアピールを続けていく。

「これで満足してはいけないと思っています。スタートから試合に出て、もっと活躍しないと。きょうみたいな点を決めていければ、一番いいですね」

『聖地』駒場での劇的なゴールが、飛躍のきっかけになるかもしれない。

取材◎杉園昌之