リーグ開幕のFC東京戦に続き、横浜FM戦でも無得点に終わり、手痛い2連敗を喫した浦和レッズ。マチェイ・スコルジャ新監督の目指すサッカーは攻守両面でまだ機能しているとは言い難いものの、2戦目を迎えて、光明も見えた。後半開始から投入された興梠慎三である。36歳を迎えてもなお、その存在感は絶大だった。

上写真=後半から出場し、攻撃を活性化した浦和の興梠慎三(写真◎J.LEAGUE)

チャレンジのパスが出しにくくなっているのかも

 背番号30の熟練されたポストワークが、攻撃を活性化させた。興梠慎三がピッチに入ると、途端にリズムが良くなった。前線の中央で敵を背負ってボールを収めたかと思えば、スペースに流れてパスを受け、サイドで起点をつくっていた。長年にわたり、当たり前のようにこなしてきた役割である。

「相手は前からプレスに来ていたので、ちょっと動けば、パスをもらえるスペースがあるかなと思っていました」

 開幕戦では後半の69分から出場し、ボールに絡む回数も限られていたが、この日は何度も見せ場もつくっていた。目を見張ったのは57分のチャレンジ。中盤まで下がってボールを受けると、相手を引き付けて、最終ラインの背後に技ありのスルーパスを通す。スペースに走り込んだ酒井宏樹はシュートこそ打てなかったが、ゴールの可能性を感じさせるプレーだった。

「もうちょっと良いパスを出せた。1対1に持っていけるくらいのボールを出したかったです。相手がハイラインだったので、後ろから飛び出していけば、チャンスになりますね。監督がボールを奪われないことを大切にしているので、チャレンジのパスが出しにくくなっているのかもしれない。ただ、ボールを取られるリスクばかりを考えていると、良い攻撃はできません。僕は(リスクを冒して)狙っていきましたけど」

 悔やまれるのは、流れを引き寄せた後半の時間帯にゴールを奪えなかったこと。

「2回くらい決定機があったので、決めきらないと。2試合を終えて、ノーゴール。FWとしては、もっと頑張らないといけない」

 J1歴代2位の通算163ゴールを挙げているストライカーの矜持がある。期限付き移籍していた北海道コンサドーレ札幌から復帰した今季は二桁ゴールを視野に入れており、ただのジョーカーで終わるつもりはないはず。3月4日の3節はホーム開幕戦。浦和駒場スタジアムにセレッソ大阪を迎える。

「試合に出るチャンスがあれば、勝ちにいく。3連敗は阻止したい。ホームで勝って、連勝していきたい」と意気込み、前を向いた。

 ゴールで存在価値を証明し、浦和のエースと呼ばれてきた男のモチベーションは高い。

取材◎杉園昌之