2023シーズンのJリーグ開幕戦は、2−1で横浜F・マリノスが川崎フロンターレを下した。川崎Fはホームで敗れることになったが、内容にフォーカスすれば、新しいトライが見られ、ポジティブな要素も多かった。

上写真=大島に指示を送る鬼木監督。相手を圧倒する攻撃を求めて今、川崎Fは戦い方にトライしている(写真◎小山真司)

■2023年2月17日 明治安田生命J1リーグ第1節(@等々力/観衆22,563人)
 川崎F 1−2 横浜FM
 得点:(川)橘田健人
    (横)西村拓真、エウベル

ボールを握り、チャンスを創出

「フライデーナイトJリーグ」で始まった新シーズンのJ1は、ディフェンディングチャンピオンの横浜F・マリノスが、王座奪回を狙う川崎フロンターレをアウェーで2-1と下した。川崎Fの得点は後半のアディショナルタイムに挙げたもので、そこまで2-0とリードし、84分にはマルコス・ジュニオールが抜け出して直後の判定ではPKを獲得。VARでペナルティエリアー外の反則と訂正されたが、あわや3-0で終わるかと思わせた展開からは、横浜FMの完勝と言えた。

 しかし、90分のプレーを振り返れば川崎Fが完敗したとは言い難い。内容では横浜FMを上回っていた時間も長かった。試合後のDAZNのスタッツを見ても、シュート数で川崎が16本、横浜FMは9本で大きく上回り、枠内シュートも川崎Fが10、横浜FMは7と、決定機の数でも勝っていた。ポゼッション率も川崎Fが63%、横浜FMが37%と、ともにボールを握りたいチーム同士であることを考えれば、川崎Fがよりボールを支配して動かしていたといえよう。失点にしても1点目はGKチョン・ソンリョンのミスキックをひっかけられたもの、2点目はCKからのセットプレーで奪われたものだった。

 もちろん、川崎Fの目指す理想からいえば、2点を失っても3点を奪って勝ち切りたいところだが、それだけのチャンスは作っていた。とくにドリブルの切れ、スピードそのものも増した感のあるマルシーニョを軸とした左サイドからの攻撃は圧巻だった。左のインサイドハーフに入った遠野大弥、左サイドバックの佐々木旭との連係も良く、佐々木の積極的でタイミングの良い攻め上がり、遠野の裏へ抜け出すスピードも相手の脅威になっており、マルシーニョの個人技と3人のコンビネーションで多くのチャンスを生み出した。この左サイドは今シーズンの新たな武器になるだろう。

 対して右サイドは家長昭博がまだ万全なコンディションではなく、前半のみのプレーになったこと、また右サイドバックの山根視来はこの日サイドの攻め上がりよりも中央に入ってパスを受けるプレーを頻繁に見せており、CB、GKからのパスコースを作り、横浜FMのプレスを交わす役割を果たしていたこともあって、これまでのような家長とのコンビネーションによる崩しは見られなかった。それでも後半から家長に代わって登場した瀬川祐輔(今季湘南から移籍)が、右サイドから正確なクロスを上げてチャンスをつくった。これまでは中へ入ってシュートを狙うイメージが強かった選手だが、この日はワイドに開いて受け、効果的なプレーで新境地を開いた。家長の状態が良ければ、これまで通りにそのキープ力を生かした攻撃が見られるはずだが、とはいえ今年37歳となる年齢的も考えれば、オプションとして瀬川のプレーにも期待したいところ。

 中盤でもキャプテンに就任した橘田健人の運動量は目を見張り、攻守に躍動。「14番」脇坂泰斗のパスセンスも健在で、ここにこの日は20分ほどのプレーにとどまった大島が完全復活となれば、お家芸ともいうべきパスサッカーはさらに高まり、攻撃のバリエーションは増えることになるだろう。鬼木監督も敗れた試合後にもかかわらず「(選手たちは)チャレンジャー精神で、怖がらずにボールを動かしていくなど、やってほしいことを数多く出して、前向きにプレーしてくれた」とプレーにはポジティブな感想を語っていた。

 車屋紳太郎が負傷し、ジェジエウが退場処分を受けて次戦は出られないディフェンスの立て直しが必要とはいえ、新シーズンの川崎も攻撃プレーで見る者を楽しませてくれそうだ。

取材◎国吉好弘