上写真＝川崎Fは勝利を収めたが届かず2位。キャプテンの谷口彰悟も悲しい表情（写真◎小山真司）
■2022年11月5日 J1リーグ第34節（味スタ/34,820人）
FC東京 2-3 川崎F
得点者：（F）アダイウトン2
（川）脇坂泰斗、マルシーニョ、オウンゴール
「もっと取れたりもっと防げたり」
川崎フロンターレの大逆転3連覇は、実現しなかった。
「ラストゲームで勝って悔し泣きしなければいけないのは、仕方のないことなですけど、この1年の積み重ねなので真摯に受けとめていきたい」
鬼木達監督は試合直後にまだ呆然とした様子を残しながら、最終戦を、このシーズンを振り返った。
川崎Fが大逆転優勝への可能性を残し、キックオフからハイテンポ。イーブンボールをどちらが先に収めるかのバトルに始まり、川崎FがハイプレスでFC東京のビルドアップのミスを誘い、押し込んでからの19分に先制ゴールが生まれる。
左サイドでマルシーニョと橘田健人で一度相手に渡ったボールを奪い返すと、マルシーニョが中央へ、受けた脇坂泰斗が得意の右足ミドルをゴール右スミに滑り込ませた。
ここからさらにギアを上げたい川崎Fに、不運が訪れる。今年夏までチームメートだったFC東京の塚川孝輝にラインの裏にロングパスを送られると、走り込んでいたアダイウトンより先に触ろうと飛び出したGKチョン・ソンリョンが交錯、このプレーでチョン・ソンリョンが退場処分を受けたのだ。
ここからは攻めるFC東京、守る川崎Fの色合いが鮮明になった。その勢いのまま、後半開始早々にFC東京がスコアを動かした。47分、FC東京が粘り強く右サイドで渡邊凌磨が奪い返したあと、塚川のクロスが中央でこぼれ、アダイウトンが蹴り込んで同点に追いついたのだ。
川崎Fは勝つしかない。1人少なくなってから、前線から相手のパスコースを抑えられずに苦しんだが、59分に大島僚太と知念慶をピッチに送り込んでからボールを前に運べるようになった。すると61分、橘田が長い距離を走ってボールにアタックして下げさせて、それをさらにゴールライン際で奪うと、中央へ、マルシーニョがたたいてゴール右に転がり込む勝ち越しゴールが生まれた。
しかし、これで終わらないのが「多摩川クラシコ」。FC東京が66分に投入されていた紺野和也の右からのクロスに、ファーで渡邊が戻してアダイウトンがヘッドで押し込み、74分にまたも同点に追いついた。
優勝への執念を燃やす川崎Fに幸運が巡ってきたのは、その1分後。左からの車屋紳太郎のクロスがファーへ飛ぶが、戻ってきた相手に当たってオウンゴール。三たびリードを奪った。
最後まで激しさの落ちないゲームは、このまま川崎Fが逃げきる形で勝利。首位の横浜F・マリノスが勝利を収めたために3連覇の夢はついえて、鬼木監督は「一つひとつの勝敗や、もっと得点を取れたりもっと失点を防げたり、そういうところが足りなかった」と長かったシーズンを振り返ったが、サポーターからの拍手は最後まで途絶えなかった。
現地取材◎平澤大輔 写真◎小山真司