上写真=駆けつけたサポーターとともに勝利を喜ぶ。古川陽介のJ初ゴールが決勝点に(写真◎J.LEAGUE)
■2022年10月12日 J1リーグ第27節(日産ス/20,493人)
横浜FM 0-1 磐田
得点者:(磐)古川陽介
「自信を持って足を振った」
「ファンの皆さんには、お待たせしました、の気持ちが強いです」
ジュビロ磐田のファン・サポーターなら「待ってました!」と応えるだろう。古川陽介、Jリーグ初ゴール!
しかも、最下位の自分たちが残留を争う中で、首位の横浜F・マリノスとのアウェーゲームで、優勝が決まるかもしれないという大一番で、堂々と決勝点を決めきってしまうのだから、たまらなかっただろう。決まった瞬間、ゴール裏のサポーターの元へとダッシュした。
「緊迫感のある試合になると想定していたので、自分の勝負強さを出して結果を残すことができて、自信になりました」
ずっと横浜FMに攻め込まれて苦しい時間が続き、0-0のまま迎えた80分に松原后とともにピッチに送り込まれた。すると、その4分後だった。
横浜FMの攻撃を防いでから、カウンターを発動。自陣左で受けて一気にドリブルで運んでいった。左には松原、右には大津祐樹。自分でそのままいくか、2人のどちらかを使うか。選択肢は3つあった。選んだのは、練習通りの場所だった。
「コウくん(松原)とは意識し合っているので、どっちがどこにいるのかはお互いに把握し合っているんです。僕がドリブルで仕掛けるところと、コウくんを使うところの使い分けはできています。コウくんに出したあとに僕を信頼してもう一回使ってくれて、それがゴールにつながったと思います」
相思相愛なのだ。
「兄貴的な存在ですし、この金髪もコウくんを意識しているんです」
そう話して笑わせたが、この金髪ブラザーズには、お互いに声をかけることすら必要はなかった。
「自然に、ですね。コウくんが上がってきているのはわかっていて、直前までドリブルでいこうか考えながらプレーしていました。右には祐樹くんもいましたし、確率の高いほうを選ぼうと思っていて、あそこはコウくんを使ったほうが確率は高かったと思いました」
その判断は的中した。左の松原に預け、リターンパスをもらって、少しだけ後ろにトラップが動いたものの、ターンからワンステップで鋭く蹴り込んだ。ボールはエドゥアルドの足に当たって少しホップするようにして、ゴールに飛び込んだ。
「ちょっと後ろに流れてしまって、でも相手がまだ戻りきれていなくて、全体的にシュートも少なかったし、僕が流れを変えるという意気込みも含めて自信を持って足を振ったんです。その結果、ラッキーな形でしたけどゴールネットを揺らせることができてよかったです」
悩まずに足を振り抜いた思いが、ボールに力を与えた。
「一瞬、いろいろなことを考えたんですけど、今日はオレがいってやる、という気合が入ったシュートでした」
その気合が、ほしくてたまらなかった勝ち点3をもたらした。遠藤保仁が「本当にうれしい」と、このゴールをことのほか喜んでいたと伝え聞くと、古川はこの日一番の笑顔を見せた。
「それを聞いて、僕がうれしいです! ヤットさんに喜んでもらえて光栄です」
屈託のない笑顔を見せたニューヒーローを待ち受ける次の試合は、静岡ダービーだ。
「人を楽しませるプレーと勝たせるプレーの両方ができるように準備していきたい」
いまだ最下位と苦しい状態は続くが、古川が今度はダービーで輝けば、その瞬間に「本物」への階段を上がるだろう。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE