9月18日の明治安田生命J1リーグ第30節で、首位の横浜F・マリノスは北海道コンサドーレ札幌戦をスコアレスドローという結果で終えた。ゴールを奪えなかった事実に大きな反省を残すが、藤田譲瑠チマは後半から登場し、ゴールに向かうための「守備」に集中したという。

上写真=藤田譲瑠チマは守備の再構築で攻撃へのルートを整えた(写真◎J.LEAGUE)

■2022年9月18日 J1リーグ第30節(日産ス/20,341人)
横浜FM 0-0 札幌

「周りが釣られてアグレッシブになれば」

 引き分けた、といってもネガティブになっているわけではない。首位をゆく横浜F・マリノスが北海道コンサドーレ札幌に対して0-0で試合を終えて、藤田譲瑠チマは「悲観的になることはないし、勝ち点差は縮まっていないですから」と冷静だ。

 前日に2位の川崎フロンターレが柏レイソルに引き分けていて、横浜FMはこの試合に勝てば勝ち点差を7にまで広げることができた。結局、実現できなかったものの、残り5試合で勝ち点差は5で依然優位だ。ただ、悲観的ではなくても、ゴールを奪えなかったことには納得がいかない。藤田は後半からの登場となり、前半に札幌に主導権を握られていたから、勢いを逆転させる必要があった。

「後半からのプレーだったから、自分がアグレッシブにいくことで周りが釣られてアグレッシブになればいいと思っていました」

 そのために意識を強めたのが、攻撃ではなく守備だという。

「攻撃のところよりは、守備の部分で前半はアグレッシブにいけなくて押し込まれたシーンが多かったので、自分が出たらアンカーをつぶすことと、相手のフォワードはヘッドが強い選手は少なかったので蹴らせたとしてもセンターバックが跳ね返して、そのセカンドボールを拾うことができれば攻撃できると意識していました」

 前半に札幌が金子拓郎とルーカス・フェルナンデスの両ウイングバックでサイドチェンジのパスを送り合ってから、カットインで中央に切り込む攻撃を繰り返し、危険なシーンを作ってきた。このリズムを分断するためにも必要だったのが、やはり「アグレッシブ」なのだった。

「問題はその前のところで自由にさせないように、ということはハーフタイムに監督から話が出ました。前からいくことで相手がつなげないと判断して蹴らせたり、自分たちが前で奪いきることを意識してできたので、後半は相手のワイドからワイドの展開は少なくなったと思います」

 余裕を持ってウイングバックにボールを運ばせる前の段階で「元から断つ」ことが、後半の守備の要だった。

 それでもやはり、ゴールが生まれなかった。5連戦の最後で肉体も頭の中もフレッシュだったとは言い難い。そういうときこそ、できることがあったと感じている。

「後半は相手の強度も落ちて勢いがなくなってきましたけど、どっちかというと自分たちの勢いや点を取る気持ちが必要だったかなと。かっこよくなくても、きれいじゃなくてもいいから」

 そんな強い気持ちを、また新たな舞台で表現するチャンスが巡ってきた。U-21日本代表として臨む欧州遠征だ。6月のU-23アジアカップを戦ったこのチームではキャプテンを務めて3位、7月にはフル代表の一員としてE-1選手権で優勝した。クラブで結果を残して代表でさらに大きく成長して、再びクラブのために貢献する、という好循環の中にいる。

「自分にとっては初めてのヨーロッパでのプレーですし、この先、ヨーロッパでプレーしたい気持ちがあるのでそこへ向けた始めのチャンスというか、スカウトの人も見に来ると思うので、しっかりプレーを見せて成長できればいいと思います」

 10月1日にJ1が再開するときには、また一回り大きくなった背番号16の上昇のスパイラルを見ることができるだろう、と期待してしまう。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE