上写真=橘田健人は湘南戦の敗戦の分も、広島戦に強い意欲をぶつける(写真◎J.LEAGUE)
鬼木達監督も思わず拍手
「優勝するためには、ここで倒す必要がある」
普段は物静かな橘田健人の言葉も、自然と熱を帯びる。9月10日にJ1第29節、サンフレッチェ広島戦を迎える。
2位の広島は28試合で勝ち点50。3位の川崎Fは26試合で勝ち点49。首位に返り咲いた26試合で勝ち点52の横浜F・マリノスを追いかけるために、どちらも負けることはできない。
「負けたら相手を勢いに乗せることになります。残り試合は全部大事ですけど、何が何でも勝ち点3を取りたい」
前節は湘南ベルマーレに1-2で逆転負けを喫している。知念慶の2試合連続ゴールで先制しながら、最後はアディショナルタイムに足が止まって、かつて川崎Fで活躍した阿部浩之に逆転決勝ゴールを決められた。
その敗戦から3日後の9月6日、ファン・サポーターやメディアに公開されたトレーニングの最後に、黙々と自主練習に励む橘田の姿があった。後方から届くボールをフリックして相手の間を通し、左右の前線に展開するパス、そしてミドルシュート。何度も、何度も。
フリックパスはできるだけ素早く前線にボールを運んでいくため。
「インサイドハーフに入るとゴールが近くなるので、まず前から見ることが必要で、パスの精度も大事になります。そういうイメージでやっていますが、まだ安定していません。試合ではそういうシーンは1本あるかないかぐらいかもしれないけれど、いつ来ても百発百中で通せるようにしたいんです」
シュートはもちろん、ゴールで勝負を決めるため。今季はリーグ戦でいまだノーゴールなのだ。合間に鬼木達監督が近寄って、何やら話しかけた。鬼木監督自身が実演したシュートは、大きく右に外れていく。
すると橘田が放った次の一本が、ゴール右上にずばり。つまり、鬼木監督は橘田の癖を再現してみせて、修正を促していたのだ。
「ボールに力が乗るように、という話です。インサイドとかインフロント気味に蹴ることが多かったんですけど、カーブのように蹴る感じでありながらも、インステップでよりまっすぐ押し出すような蹴り方を教えてもらいました」
積み重ねが大事だが、それでもアドバイスの直後に感じたキレに手応えはある。
「まだそんな正確に蹴ることはできていないですけど、でも力が乗っている感覚はありました。練習量を増やして精度を上げたいですね」
鬼木監督はすぐさま決めた一発を見て、思わず拍手していた。
「もともとシュートが苦手な選手ではないと思っていて、コントロールショットは上手に蹴ることができています。ただ、ゴール前だとシュートまでの時間を与えてもらえないので、ボールに近いところからでもワンステップやノーステップで蹴らなければいけません。それでパワー伝える方法を話したという感じです。でも、思った以上にパンチがありますよ」
守備能力の高さでのし上がってきた男が、じっくり仕込んだ攻めのテクニック。広島戦で披露して、勝利に導きたい。