横浜F・マリノスは9月3日、AFCチャンピオンズリーグで敗退したあと、初めて明治安田生命J1リーグに臨んだ。FC東京とのアウェーゲームは、しかし2-2のドロー。前半に見せた好リズムを後半に出せなかったことが要因だと、藤田譲瑠チマは振り返る。

上写真=藤田譲瑠チマは後半にも自分がもっとボールを引き受けるべきだったと反省する(写真◎J.LEAGUE)

■2022年9月3日 J1リーグ第28節(味スタ/29,034人)
FC東京 2-2 横浜FM
得点者:(F)塚川孝輝2
    (横)岩田智輝、仲川輝人

「少し混乱してしまった」

 前半2-0、後半0-2。トータル2-2。横浜F・マリノスにとって、J1のリスタートとなるFC東京戦で勝ち点2を落とした印象だ。

「前半は素晴らしいパフォーマンスだった」というケヴィン・マスカット監督の言葉を待つまでもなく、最初の45分のほとんどは横浜FMのもの。狙い通りにボールを左右に動かして、外から、中からと攻め立てた。守っても数えるほどしか相手を前進させなかった。

 印象的なのは藤田譲瑠チマだ。

 37分、相手を左深くに押し込んでおいてクリアを蹴らせ、エドゥアルドがヘッドで回収して永戸勝也へ。喜田拓也、藤田、エウベルときれいな三角形でワンタッチパスを回し、もう一度、藤田が内側でサポートした。このタッチが絶妙だった。寄せてきた紺野和也のステップを外すように一歩前に押し出して狭いスペースを割ると、東慶悟と長友佑都の間でゴールに向かって開いたパスコースに流し入れて、ボックス内のレオ・セアラへ。シュートはブロックされたものの、ワンタッチで前に出て一瞬のリズムを変えた。

「賢さ」を象徴するようなこのプレーには、藤田自身も手応えを感じている。

「ああいったところで自分たちのポジションの選手が飛び出せればチャンスになるので、うまく抜け出せたシーンだと思います」

 そんな好リズムが40分の先制ゴールへとつながった。永戸勝也の右CKが中央に流れ、岩田智輝がプッシュした。

 続く45分の2点目でも藤田は仕事をした。ハーフウェーライン近くで受けてさばいてから、左サイドで展開する間に下がってきたレオ・セアラと入れ替わるようにして一度前線へ顔を出す。これが「消える」動きになってフリーになり、次に戻りながら永戸から内側でもらい、ワンタッチで下げて喜田を前向きでプレーさせている。喜田は左外の西村拓真に預け、縦突破からセンタリング、中央で仲川輝人が決めている。

 喜田と並んで中盤のセンターを任され、ボールをローテーションさせていく「交差点」に立った。しかし、後半はボールの巡りが滞ってしまう。

「前半は勢いを持ってうまく試合に入れましたし、最後の時間で点を取れたのは良かったんですけど、後半は相手が修正してきてポジションを変更したりして、少し混乱してしまった部分があります」

 53分、63分と連続ゴールを許して、追いつかれた。

「相手がプレッシャーの仕方を変えてきて、カシーフ(バングーナガンデ佳史扶)が後半に入ってきて高い位置を取ってこちらのサイドバックに寄せてきて、うまく時間を作れなくなったのが要因でした」

 少し足を痛めて85分にピッチを去ったが、「距離感が遠くなって、自分がもっと受けて前線の選手を経由して攻められればよかった」のが最大の反省点。上位を争う川崎フロンターレが敗れて勝ち点で並び、得失点差で上回ったものの、サンフレッチェ広島に追い抜かれて、暫定ながら2位のまま。残りは9試合で消化試合数が広島や川崎Fより少ないものの、もう勝ち点を落とさないためにも、藤田の賢さがさらに必要になってくる。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE