JリーグYBCルヴァンカップで、サンフレッチェ広島がベスト4進出を決めた。第1戦に3-1で勝って迎えた第2戦でも、2-1で勝利。序盤に迎えた3つの出来事を越えた先にベスト4の地平があった。ミヒャエル・スキッベ監督も「面白い」と充実の表情だった。

上写真=アウェーの第2戦でも完勝した広島が堂々のベスト4進出(写真◎J.LEAGUE)

■2022年8月10日 ルヴァン杯準々決勝第2戦(ニッパツ/9,255人)
横浜FM 1-2 広島
得点者:(横)レオ・セアラ
    (広)ナッシム・ベンカリファ、野上結貴
※広島が2勝で準決勝に進出

大迫敬介のビッグセーブが分かれ目

「面白いルヴァンカップでした」

 ベスト4進出を決めたあと、ミヒャエル・スキッベ監督の第一声がこれだった。ただ連勝して勝ち抜けたから、ということではない。リーグでは首位を走る強敵の横浜F・マリノスを相手に、真っ向勝負で納得のいくパフォーマンスを演じた充実感だった。

 1週間前の第1戦は3-1で勝利。アウェーゴールを与えたとはいえ、2点のアドバンテージを持って第2戦に臨むことができた。横浜FMは勝つしかないから点を取りにくることは想定できたが、心構えはノーマル。2位の鹿島アントラーズをアウェーで2-0で下したリーグ戦から中3日、強敵続きのアウェー連戦でも、スキッベ監督は1人しか先発メンバーを代えずに臨んできた。

「カップ戦もリーグ戦もすべてが重要だと思っています。その都度、ベストの選手がフィールドに立つようにと考えていて、うまく回復できているのであれば、その中でいい選手が出ることになります。いまはチームがいい状況で進んでいるので、多くを代える必要はないと考えています」

 勝っているときは変えない。勝負の鉄則である。

 とはいえ、そんなスキッベ監督も「幸運だった」と胸を撫で下ろしたのが4分のシーンだ。横浜FMが広島から見て右から横につないで、左でフリーになった水沼宏太の元にボールが届く。強烈なフィニッシュが向かってきたが、GK大迫敬介が止めてみせた。

「前回のホームゲームでマルコス・ジュニオール選手との1対1を止めたシーンと似ているんですけど、数的不利ではあったけれどディフェンスが割り切ってはっきりした守備をしてくれて、水沼選手がいたのもわかっていたのでパスが出たときに思い切り出ました」

 殊勲の大迫は1週間前の感覚が生きた上に、仲間の守備の思い切りに助けられたと感謝した。このシーンが勝負の分かれ道になったとするのは、先制点を挙げたナッシム・ベンカリファも同じだ。

「今日は最初に大迫のビッグセーブがあって、相手が10人になったことを踏まえて、総合的に自分たちが上回ったと思います」

 14分に角田涼太朗が森島司を引っ掛けて、得点機会阻止のためにレッドカードを提示された。数的優位は確かに助けになった。ただ、ビッグセーブと退場劇の間にあった、勝利に大きな力になったことを一つ言い忘れている。自らのゴールだ。

「いつもどおり、自分の活躍よりもチームが勝つことが大事なのは変わりありません。でもストライカーとしては、点が取れたのはうれしいことでした」

 8分に中央で畠中槙之輔がパスをカットして一瞬、立ち止まったところに背後から忍び寄って奪って、そのまま左足で蹴り込んでみせた。

「森島(司)と2人で前から追っていこうと話していて、センターバックがボールを抑えたところが狙い目だというのは2人で共通認識を持っていました。それがうまくハマったシーンでした」

 自画自賛である。

 こうして、序盤に立て続けに起きた3つの大きな出来事を経て、落ち着いて試合を進めた。22分に一度はレオ・セアラに追いつかれたものの、37分には左サイドを佐々木翔が縦パスで割り、柏好文が中央に入れて、野上結貴がプッシュするという(少し長めのVARチェックが入ったことを除けば)完璧なゴールで突き放した。

「1点を取られましたが、試合を握れるところに関しては確信を持てました。前半に失点して以降も、見失わずに自分たちのサッカーができて、後半は完全に支配できました」

 スキッベ監督の言葉通り、面白いように攻めて後半だけでシュートは10本。ここで一つも決まらなかったことはまた反省点だが、「面白かった」充実感は、リーグ戦へ、そしてアビスパ福岡と戦う9月の準決勝への大きなパワーになっていく。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE