川崎フロンターレで谷口彰悟とともに最終ラインの真ん中に立つ車屋紳太郎。得意の左足で繰り出すビルドアップに自信を持っているが、明治安田生命J1リーグ第21節のガンバ大阪戦で、納得のいく1本のパスがあった。

上写真=車屋紳太郎は自慢の左足で強力なシュートも(写真◎J.LEAGUE)

G大阪戦4点目は「残念!」

 川崎フロンターレのDF車屋紳太郎はプロ9年目の30歳で、キャリアは十分だ。ただ、成長への欲はそのキャリアの長さには関係なく、衰えることはない。

 例えば、直近のJ1第21節のガンバ大阪戦では、一本の何気ない(ように見えた)パスに、大きな意味を見出している。

 それは、30分のチーム3点目のきっかけになった。車屋が最終ラインの左寄りの位置でボールを持ったときに、左外には佐々木旭、前にはチャナティップがいた。車屋が選んだのは、後者。

「旭もフリーでいたんですけど、中の選手を選択したことに意味があります。中で人を集めてサイドが空くという使い分けができたと思います。いままでなら、あのままサイドに流すシーンが多くて、自分にはそこが課題で、中につけるパスを出さなければいけないと思っていました」

 チャナティップが左を走った佐々木に展開し、センタリングをマルシーニョがスルー、脇坂泰斗が流し込んだ。中から外、外から中、と崩すことができたのは、車屋が最初に中を選んだからだった。

 車屋はだが、それで満足、ではなかった。

「あのシーンでチャナティップを選択したことはよかった。でも、強いて言うなら、ヤス(脇坂泰斗)やアキくん(家長昭博)のところまで見えた上で選択肢を持つことができれば、もっと自分が上のレベルに行けると思っています」

 そんな貪欲さは、「残念!」と笑った4点目にも表れた。36分に脇坂からの右CKになんとか食らいついて左に流すと、家長が利き足とは逆の右足による華麗なバイシクルショットを決めたのだ。

 どうして残念なのかというと…。

「相手に先に体を入れられたのでどうにかボールを触ろうとしたんですけど、アシストがつかないのは残念ですよ」

 車屋のパスが相手に少し当たったので、記録には残らなかったのだ。

 相手を押し込んでいけるようになって、センターバックも攻めに関わる機会が増えてきた。ゴールに直結するプレーが生まれるのも、あるいは自ら決めるシーンが見られるのも、時間の問題かもしれない。