浦和レッズの大久保智明は、10日のFC東京戦で待望の今季初ゴール。5試合連続となる先発出場の期待にようやく応え、ほっと胸をなでおろしていた。小気味いいドリブルでスタンドを沸かせる大卒2年目の新鋭はいま、確かな手応えを感じている。

上写真=今季初ゴールを記録した浦和の大久保智明(写真◎J.LEAGUE)

■2022年7月10日 明治安田生命J1リーグ第21節(@埼玉スタ/観衆26,293人)
浦和 3-0 FC東京
得点者:(浦)ダヴィド・モーベルグ、伊藤敦樹、大久保智明

ゴールという形で貢献できて良かった

 勝利を決定づけるゴールだった。2点リードで迎えた70分、右サイドを深くえぐった江坂任の折り返しに反応し、勢いよくニアサイドに飛び込んだ。シュートは左足のインサイドに当てるだけ。クロスに入り方は、何度も練習してきたパターンである。イメージどおりに落ち着いてゴールネットを揺らすと、一目散に真っ赤に染まるゴール裏のスタンドへ。胸のエンブレに手を当てて、今季初ゴールの喜びを分かち合っていた。試合後は埼玉スタジアムのファン・サポーターが見守るヒーローインタビューでマイクを握り、安堵の表情を浮かべた。

「やっとゴールを決められて、うれしいです。(2戦連続ドローで)なかなか勝てなくて、ファン・サポーターにはフラストレーションをためさせてしまいました。きょうはゴールという形で勝利に貢献できて良かったです」

謙虚な姿勢を崩さない大久保には、温かい拍手が注がれた。途中交代でピッチから出るときにも、「よくやったぞ」とのメッセージが込められているような万雷の拍手。大久保の見せ場は得点だけではない。レフティー独特のテンポを持つドリブルで局面を打開し、数多くのチャンスをつくり出していた。目を引くのは、昨季よりも切れ味が一段と増していること。

「いまは考え過ぎずにプレーしているんです。僕は考え過ぎてしまうタイプなので」

 根が真面目なのだ。中央大学時代から毎日のようにサッカーノートをつけ、日々自分と向き合っている。ただ、いまはピッチに入れば、感覚に頼る部分も大きい。ちょっとした意識改革がプラスに働いたのだ。6月18日の名古屋グランパス戦で今季初めて先発出場し、3-0の勝利に貢献。このゲームを境に毎試合、シャープなドリブルで『違い』を見せている。

「今年から体が勝手に動くトレーニングをしているんです。続けていると、とっさに体が動くようになってきました」

 昨季までチームメイトだった西大伍(現・コンサドーレ札幌)に紹介され、陸上十種競技の元日本王者・池田大介さんから指導を受けているという。夏を迎えて、影の努力が実を結びつつあるものの、1ゴールでは物足りない。野心あふれる23歳は、目を輝かせていた。「また決められるように頑張ります」。浦和の勝利に導くために、ここから得点を積み上げていく。

取材・文◎杉園昌之