明治安田生命J1リーグは6月25日、26日の第18節から後半戦に突入した。全国的に真夏の暑さに見舞われた週末で、川崎フロンターレはジュビロ磐田を迎えた。前半に主導権を握った川崎Fが33分に先制するものの、磐田は85分にCKから同点に。ハーフタイムの修正が効いた。

上写真=見事に同点ゴールを決めた伊藤槙人。守備でも1失点したものの、3バックの中央で体を張った(写真◎J.LEAGUE)

■2022年6月25日 J1リーグ第18節(等々力/19,024人)
川崎F 1-1 磐田
得点者:(川)山根視来
    (磐)伊藤槙人

「怖いところに人が走ることが大事」と鬼木監督

 後半戦のスタートは、いわば「第2の開幕」。川崎フロンターレはアウェーの前回対戦でジュビロ磐田に苦しめられて、辛くも1-1のドローに持ち込んだ。だから、ホームではきっちりと勝ちたかった。

 しかし、立ちはだかったのが磐田のGK三浦龍輝である。まさに前回対戦でミスから川崎Fに同点ゴールを許していたが、その分も、とスーパーストップを連発した。16分、ショートCKから谷口彰悟が放ったヘディングシュートをかき出し、22分に狭い中央をワンツーでこじ開けられ、家長昭博が右足で狙ったシュートを右足で弾いた。

 だが、川崎Fが常に攻める構図は変わらない。33分のチャンスではついに三浦の牙城を破る。5人の最終ライン、4人のミッドフィールドの2ラインで引いて構える磐田の布陣では、その中盤の手前側は空いてくる。そこで受けた谷口が持つと、右サイドの裏のスペースに山根視来がダイナミックに走り込む。谷口からの浮き玉のパスをそのままワンタッチで、右足でゴール左に送り込んだ。

 川崎Fはしかし、追加点を奪えないことで苦しんだ。

 試合の色は後半にガラリと変わる。磐田が守備で大森晃太郎を一列前に出して、最前線の杉本健勇とともに川崎Fの最終ラインに高い位置からプレッシャーを掛けると、徐々にプレーエリアを前へと押し込んでいく。伊藤彰監督も「前半は想像以上に持たれて受け入れてしまった。2センターバックとアンカーに対してプレッシャーに激しくいこうとオーガナイズを変えました」と説明し、ハーフタイムの指示が功を奏したことを喜んだ。

 川崎Fにとって痛かったのは、55分のビッグチャンスか。相手の攻撃を止めて一気にカウンター、大島僚太のパスで抜け出したチャナティップがGK三浦と1対1になって、放ったシュートが右ポストをたたいた。

 すると85分、磐田に同点ゴールが生まれるのだ。右CKを遠藤保仁がニアに鋭く送ると、ゴールエリアの角付近で伊藤槙人がゴール逆へと弧を描いて送り込むヘディングシュート。蹴った遠藤が「狙い通り」とさすがの精度で導けば、川崎Fにとってみれば谷口が「交代選手が入ったあとで、いつもと違う役割をしなければいけない選手もいた」とマークにやや混乱があったことを悔やんだ。

 前半はシュートゼロだった磐田が、終盤に追いついてドロー。前回対戦と結果は同じだが、展開は逆になった。もちろん、追いついたほうがポジティブ。伊藤監督は川崎Fとの差は「まだまだある」としながらも、「中を閉めて外に追い出せた」と守備での手応えも十分だった。交代で送り出したジャーメイン良のスピードと金子翔太のライン間でボールを引き出すセンスも終盤の攻勢につなげ、「2人がいたからこそ後半のゴールにつながったと思います」とこちらも采配が当たった。「あわよくば勝ち点3を持ち帰りたかったですが、この勝ち点1が大きなものを生むと思います」と、自信を携えて磐田に帰った。

 川崎Fは3日前の天皇杯3回戦で東京ヴェルディに敗れた重い空気を、勝利でかき消したかった。しかし、追加点が奪いきれないもどかしさは拭い去れなかった。鬼木達監督は原因を「目を揃えないと」の言葉に集約させた。先制点は山根が大胆なランニングで背後を突いたが、その数は全体として少なめ。「あの動きであれだけ背後を取れますし、前半は狭い中でバイタルにボールが入っていて、そのタイミングで抜け出せる選手がいれば、5バックにもギャップができてくるんです。怖いところに人が走ることが改めて大事だと思いました」と、攻撃の細部に目を向けた。先に試合を終えていた首位の横浜F・マリノスが勝利を収めたため、勝ち点差は3に開くことになった。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE