上写真＝川崎Fは小林悠が2ゴール。ここまでリーグ無得点だっただけに、感激の雄叫びにも力がこもる（写真◎J.LEAGUE）
■2022年6月18日 J1リーグ第17節（等々力/18,960人）
川崎F 5-2 札幌
得点者：（川）家長昭博2、小林悠2、マルシーニョ
（札）青木亮太、荒野拓馬
「ためたミルクをひっくり返した試合」とペトロヴィッチ監督
「スリッピーだし、いいバウンドをさせていいコースに流せたと思います」
驚きのバイシクルで反撃の同点ゴールを決めた小林悠は、最高の笑顔で振り返った。雨が止まないコンディションでは、ボールがよく滑る。それがゴールのきっかけになるのもよくあること。前半の2ゴールがまずそれだった。
28分に先制したのはアウェーの札幌。右からテンポよく攻めて駒井善成がゴール前に滑り込ませたボールは、川崎Fの大島僚太が読んでいたが、タッチしたボールがゴール前に流れて、青木亮太が蹴り込んだ。
42分には川崎Fが追いつく。左サイドで相手ボールを奪ってから素早く攻め、大島の中央へのくさびから知念慶がターン、これをマークに付いていた札幌の宮澤裕樹が触ってゴール前にこぼれ、飛び出した家長昭博がつついて同点とした。
素早く中央へと小気味良くボールを送ったこと、結果的にボールが滑って相手ミスを誘う形になったこと、こぼれ球を狙う集中力を持った選手がいたこと。3つの共通点でそれぞれにゴールが生まれた。
後半は両チーム合わせて4本のゴールショーだ。札幌は66分、右CKから福森晃斗が高質のストレートキックを中央に入れて、荒野拓馬がヘッドで決めてまたもリードに成功した。しかしここから、川崎Fが猛ラッシュをかける。3分後の69分、川崎Fが右から家長、脇坂泰斗、チャナティップとつないで中に進入し、最後は途中交代の小林悠が鮮やかなバイシクルシュートをゴール左に流し込んで、すかさず振り出しに戻した。
体力を残していたかのように、ここから一気に押し込んだのが川崎Fだった。札幌がゴール近くでボールを回したところにレアンドロ・ダミアンとマルシーニョが猛プレスで奪うと、家長のシュートはブロックされたが最後は小林が蹴り込んで、この試合初めてのリードを奪う。3分後には同じように高い位置でプレスをかけて相手のクリアミスを誘い、これを小林が拾って家長に渡すと、そのままするすると抜け出して右の角度のないところから蹴り込んだ。
締めは90＋6分。相手FKを谷口彰悟がヘッドで前線へつなぎ、マルシーニョが一気にドリブルで進んでDFを2人かわしてゴール右に流し込んだ。10分間で3ゴールというゴールラッシュで、あっという間に突き放してみせた。
札幌のペトロヴィッチ監督は「3点目を取られるまでは素晴らしいゲームだった」としながら、川崎Fが小林悠、マルシーニョ、レアンドロ・ダミアン、ジョアン・シミッチと主力級の選手を途中から出してきたことで、交代選手の質の差を強調。加えて、2度のリードを守れなかった悔いを「少しずつ牛から乳をしぼってためたミルクをひっくり返した試合。いいゲームをしながら壊してしまった」と表現した。
川崎Fは、1試合3ゴールというノルマを今季初めて達成できた。鬼木達監督は「全員が得点にこだわったからこそ迫力も出たと思います」と、攻撃のポリシーを貫いた勝利を喜んだ。「中断明けで勝ちたかったゲームなので、難しい追いかける展開でしたが、選手が我慢強く自分たちのサッカーを貫いたことを誇りに思います」と、さらに言葉に力を込めた。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE