上写真=渡邊凌磨が両手を広げてクールに喜びを表現した(写真◎J.LEAGUE)
■2022年5月29日 J1リーグ第16節(味スタ/28,436人)
FC東京 3-1 鹿島
得点者:(F)渡邊凌磨2、ディエゴ・オリヴェイラ
(鹿)上田綺世
「なんとか1点でも、という気持ちで」
両手を広げて歓喜のシャワーを全身に浴びていた。渡邊凌磨が今季初ゴール、しかも自身初となる1試合2ゴールを決めた瞬間、クールに笑っていた。
「キーパーとの駆け引きに勝てたゴールでした」と自画自賛だ。
「狙いとしては、1点目はファーに蹴るふりをしてニアに蹴って、今度はキーパーにニアの頭があるからと思ってファーに蹴って、うまくいきました」
33分、左サイドから小川諒也が持ち運んでくると、中央で受けて、前のディエゴ・オリヴェイラにワンタッチで預けてから右に出てリターンパスをもらう、ものの見事なワンツーで突破、最後はGKクォン・スンテをしっかり見て右足でゴール右に送り込んだ。42分には再び左からの攻撃で、アダイウトンが単独突破、中央のディエゴ・オリヴェイラが収めて一度奪われかけたものの粘って右へ、これを右足でゴール左上に突き刺してみせた。
オリジナルのポジションは右のワイド。だが、2点とも左からの攻撃に対して中央にもぐり込んだポジショニングの勝利だ。アルベル監督は23分頃からの飲水タイムで「相手の強度が落ちることを予想して、より中央でプレーするように凌磨に指示を出しました」と明かす。
「狙いは(松木)玖生に青木(拓矢)の脇に落ちて数的優位を作ってもらうことがあって、その次のフェーズとして相手のワンボランチの脇に(安部)柊斗と凌磨を配置して、さらに数的優位を作ることを狙っていました」
これが、まんまとはまったのだ。渡邊も「清水戦からそうでしたけど、自分でタイミングをつかんで試合を見ながら中に入って、いい形になることがが多かった。試合前にも、それを出していけと言われていたので、うまくいったことが次につながると思います」と大きな手応えを得ている。
左から持ち運び、ディエゴ・オリヴェイラを経由して渡邊が決めきる、という得点パターンで、ポイントはディエゴ・オリヴェイラとの距離感だろう。「練習からディエゴといろいろ話しながらうまくできたので、結果が出てよかったし、どんどん出していきたい」。右サイドでワイドでもシャドーのような場所でもプレーできる汎用性が、チームの攻撃にバリエーションをもたらしている。
シュートはどちらも肩の力の抜けた、リラックスしたスマッシュショット。気持ちよくゴールネットを揺らしている。
「ルヴァンカップから、決められそうで決められない試合が多かったので、なんとか1点でも、という気持ちでやってきて、それが2点という形になってよかったです。でも、シーズンはちょうど半分ぐらいで、まだまだ得点を重ねられる機会があると思うので、満足せずにやっていきたい」
2点目の直前には鈴木優磨に詰め寄られる場面もあったが、「あまり相手にしないでいました」と惑わされずに落ち着いてかわして、ゴールでお返し。そんな鮮烈な2ゴールでもなお、満足はできない。謙虚にゴールを目指す姿勢を示し続けるだけだ。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE