17位の湘南ベルマーレが首位の川崎フロンターレを4-0の大差で破った一戦に、快哉を叫んだ人も多いのではないか。その原動力の一人となったのが、町野修斗。ヴィッセル神戸を相手にホーム初勝利を飾った前節で2ゴールを挙げたストライカーは、2試合連続2ゴールと派手な活躍を見せた。

上写真=町野修斗が50分に決めた先制ヘッドがゴールラッシュのスタートに(写真◎J.LEAGUE)

■2022年5月25日 J1リーグ第15節(等々力/14,068人)
川崎F 0-4 湘南
得点者:(湘)町野修斗2、池田昌生、タリク

「これは自分のところに来るな、と」

 0-0で折り返した後半に、11分間で一気に4ゴール。湘南ベルマーレが川崎フロンターレのお株を奪うゴールラッシュだ。そのきっかけは、町野修斗の先制ゴール。

 50分に杉岡大暉がファーに送った右CK。川崎FのDF佐々木旭に体をぶつけられながら耐えて頭を突き出すと、しっかりとボールをとらえてゴール左へと送り込んだ。時間をかけて準備してきたセットプレーから決めたことが、チームにとっては大きい。

「セットプレーは神戸戦の前に練習でもミーティングでもかなりやっていて、相手の15センチ、30センチ前で触ろうという意識を再確認しました。久しぶりに取れてよかった」

 相手よりもほんの少しだけでも頭を前に出すことができたのは、その強い意識のおかげだった。

 54分に池田昌生が追加点を挙げると、もう止まらない。60分に再び町野。今度は前半から効いていた中盤の鋭いプレスで奪うと、大橋祐紀が一気に前へ運んだ。右に杉岡、左に町野が並走する。大橋が預けたのは、左だった。

「ボールを取った瞬間にチャンスだなと思って、僕とスギちゃん(杉岡)が前に走っていきました。おおちゃん(大橋)がどっちへのパスを選択するかと思いましたが、僕のほうを空けてくれるような持ち出しで、これは自分のところに来るな、と思っていました。かなり良いパスをくれたので、キーパーをしっかり見ることができて、オーソドックスにファーへ決められて良かったです」

 山口智監督も「いい守備からいい攻撃」を勝因の一つに挙げていて、まさにその象徴的なゴールになった。このゴールのキックオフからまたもや同じように相手ボールを奪って一気に攻めて、今度はタリクが決めて、あっという間に4-0にしてみせた。

 今季は本当に苦しんで、初勝利は4月17日の第9節ガンバ大阪戦。そのあとも、清水エスパルスと横浜F・マリノスに1-4で敗れるなど、努力が結果に表れなかった。しかし、前節でようやく2勝目、しかもホーム初勝利を挙げると、今度は首位チームに4-0の圧勝と、V字回復だ。しかし、そこに秘策はない。

「戦うところだったり、ゴールへの執念、体を張った守備、そういう基本的なところを、大敗してきたあとに練習からやってきました」

 2試合連続2ゴールの離れ業は、愚直に一生懸命に戦い抜いたから。ゴールはもちろん、その過程こそが、これからの湘南の、町野の支えになるはずだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE