上写真=鬼木達監督は前節で谷口彰悟が退場したときも「意外とみんな冷静なのかなと」切り替えの早さを評価した(写真◎J.LEAGUE)
「選手の良さをどういう形で揃えるのが一番いいのか」
サガン鳥栖とのタフな90分は、終わってみれば0-0だった。82分に谷口彰悟のファウルがVARチェックを経て退場になったこともあったが、ともに持ち味を出し合う見応え充分の戦いになった。
その要素の一つが、鬼木達監督がこまめに選手の立ち位置を修正した戦い方にあるだろう。
キックオフではいつもの4-3-3でスタート。中盤から前ではフレッシュな選手を多く起用して、アンカーにジョアン・シミッチ、インサイドハーフには小塚和季と瀬古樹、センターフォワードには知念慶、左ウイングには小林悠を起用した。
鳥栖のハードなプレスを見ると、前半途中に微調整。瀬古をボランチに下げてシミッチと並べ、右に家長昭博、左に小塚を担当させ、小林と知念が最前線で押し込む4-4-2に近い形にシフトした。
後半開始からは小塚に代えてマルシーニョを投入して左サイドに、小林をセンターフォワードに、知念を右サイドに、中盤の中央に家長を配置する4-2-1-3でゴールを目指した。62分にはレアンドロ・ダミアンとともに投入した橘田健人をボランチに起用すると、瀬古をトップ下にスライドさせる配置転換もあった。
「相手の狙っているところが分かっていながらも、そこを少し突かれていたこともあったので、その部分の修正と、自分たちがやりたいことをうまくかみ合わせられればもっともっと良かったですが、そういったところで変更しました」
鬼木達監督の説明だ。前節から5人を入れ替えたメンバーでも違和感なく微調整を施すことができたのは、選手たちの個性をいかに組み合わせるかを考え抜いた結果でもある。
「選手の良さをどういう形で揃えるのが一番いいのか、という思いでやっています。基準自体はもっともっと高く求めていきますけれど、そこへ向けて選手が取り組んでいるのは心強いです」
鳥栖戦の90分で言えば、終盤の攻め合いに手応えがあるという。
「特別に(どの時間帯のどのシステムが良かった)、というのはないですけど、最後には少しずつ持っていかれたシーンもありながらも、チャンスシーンは増えてきていました。配置が結果的に良かったかどうかはまた別ですが、チャンスの数を増やしたい思いはありました。選手にもそういうマインドでやってほしいですし、多少はやられるかもしれないけれど、逆にその分、チャンスが増えるのなら、配置においても選手のプレーにおいてもチャレンジしてほしいと思っています」
どんなときも「強気で」を掲げる鬼木監督らしい、攻撃的マインドセットだ。
「リスクと思うことがリスクというか、ワクワクするゲームを見せるためには、リスクではなくてそこを強気にやればチャンスになるんだよ、ということです。僕の中ではリスクではなくチャンスで、最後にはやっぱり自分のところになるけれど、監督として選手にそう思ってもらえるような指導ができればと思っています」
続く相手は湘南ベルマーレ。まだ2勝しかしていないとはいえ、リスク承知でアグレッシブに攻めてくるスタイルは健在だ。リスクはチャンス。そうとらえて、湘南を上回ることが神奈川ダービーのカギを握りそうだ。