脇坂泰斗がアンドレス・イニエスタから大きなヒントを手にした。川崎フロンターレが臨むアウェー連戦の初戦、5月18日のヴィッセル神戸戦で自身3度目の直接対決。受けた刺激を体いっぱいに取り込んで、チームと自分自身の進化に生かしていく。

上写真=脇坂泰斗は今季リーグ戦ではベンチで過ごした1試合を除き、すべて先発してチームを引っ張っている(写真◎J.LEAGUE)

「実行する技術や判断を磨いてやり続けるだけ」

 ついに川崎フロンターレが首位の座を取り戻したのが、ヴィッセル神戸とのアウェーゲーム。0-0で迎えたアディショナルタイムに、谷口彰悟が右CKをニアで合わせて1-0で勝利、勝ち点3をもぎ取った。

 脇坂泰斗ももちろん、この首位奪回の主役の一人だ。今季、背番号14を背負いながら、序盤は「ミスが多い」と自分を叱責してきたが、失意のACL敗退から帰国したいま、立ち居振る舞いにリーダーとしての自覚が匂い立つ。

「自分の調子が良ければ勝つ、というような、ゲームに影響を与える選手になりたいと思っています。そういう選手は常に高い水準でプレーしなければいけないという意識でやっています」

 格好のお手本に触れて、その思いは強くなる。神戸のアンドレス・イニエスタ。チームの中の役割として、リーダーであり、ゲームコントロールを担う立場であり、攻撃の決定的な仕事をこなすチャンスメーカーでありフィニッシャーである、と酷似している。これが、自身3度目の直接対決。最初より2度目、2度目より今回と、少しでも近づいていたい。

「自分はリアクションで動いているつもりなんですけど、それすらも見て、さらにリアクションでかわされるんです。改めてレベルが高いと肌で感じました」

 相手の動きをしっかり見てから自分のアクションを選択するプレーは、脇坂の得意とするところ。過去に対戦したときよりも脇坂自身の経験値は上がっているはずだ。それでも「まだまだです」と痛感させられる。

 36分、イニエスタが川崎F陣内に持ち運んできたところで、脇坂がスピードを上げて寄せにいった。それを感知したイニエスタに、うまく逃げられた。続けて迫っていった橘田健人も一瞬、足が止められたタイミングを突かれてワンツーで抜けられ、さらに山根視来の外からのプレッシャーも見切られトラップ一つで中に切り込まれて、シュートまで持ち込まれた。

「普通の選手だったら、僕がリアクションで動くのでタイミングが合っているはずなんです。でも、さらに見られている。そこから、僕をかわしたあとの選手まで見えていて、そういったところはすごいなと感じました。ああなりたいですね」

 そんな「すごい」から、ヒントは得た。

「ボールの置きどころもそうだし、ぎりぎりまで見るということは自分にできないことではないと思います。実行する技術や判断を磨いてやり続けるだけです。ヒントはありました」

 ACLのジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)戦で美しいFKを決めた。帰国後初戦の清水エスパルス戦では、右の角度のないところからニアのトップコーナーをぶち抜くシュートで今季リーグ初ゴールを挙げた。続くアビスパ福岡戦では右CKを鋭くニアに落として、車屋紳太郎の追加点を導いた。キックが冴えてきたのは、好調を示すバロメーターだ。

「忘れかけていた部分というか、チームの中での役割が変わってチームをうまく回さなきゃという考えが頭で先に来すぎていたと思っていました。もちろんそれはやりつつも、守備も攻撃もゴールに絡むところもすべてやっていきたい」

 重要なピースとなる「力強さ」を得て、脇坂は次の進化を遂げる。