サンフレッチェ広島は13日、アウェーで浦和レッズと対戦し、0-0で引き分けた。広島にとっては難しいアウェーゲームであり、内容を伴った上で「勝ち点1」を獲得したことは指揮官も言及した通り、ポジティブな結果と言える。その中で印象的なプレーを見せたのが満田誠だ。

上写真=試合後、アウェーの地に駆けつけたサポーターに手を振る満田誠(写真◎J.LEAGUE)

文◎国吉好弘

惜しかった右ではない左足のシュート

「レベルの高い2チームが競い合った素晴らしい展開で、Jリーグの中でも良い試合だったと思います」

 サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督が振り返ったように、0ー0で両チーム得点なく引き分けたとはいえ、浦和レッズ、広島とも持ち味を発揮してお互いにゴールを目指した好試合だった。降りしきる雨の中でも埼玉スタジアムのピッチは素晴らしく、浦和はボールを動かして組み立て、広島は奪ってからの素早い攻めでチャンスを作り出した。

 その中で、両チームのスタメン22人で唯一のルーキーながら、5本のシュートを放って浦和ゴールを脅かした満田誠のプレーは目を引いた。

 8分に中盤から右足で強烈なミドルシュートを放つと、浦和DF岩波拓也の顔面を直撃し跳ね返されたが、岩波はしばらく起き上がれない強いシュートだった。さらに27分には佐々木翔の縦パスを受けると前に立ちはだかる相手DFを左に外して素早く左足シュート、惜しくも左ポストをたたいて得点にはならなかったが、「右足のシュートを警戒されていると分かったので」あえて左へかわして打つ好判断とそれを実行する技術を見せた。

 それでも「良いコースに飛んでなかった。まだクオリティーが足りない」と反省しきり。決められなければ、当然だが満足はできない。得点感覚が鋭く、ストレート、インサイドでのカーブ、ブレ球と多彩なキックの技術を持ち、シュートに自信を持っているからこそだ。

 今シーズン、流通経済大から加入。といってもそもそも広島のアカデミーで育ち、昨今三笘薫(筑波大を経て川崎Fに加入。現ユニオン・サンジロワーズ)の成功に代表されるように、4年間の「武者修行」を経て成長して帰還した。流経大ではユースからの同期でともに広島へ戻った仙波大志や、サガン鳥栖で出場機会を得ている菊地泰智、川崎Fの佐々木旭、この日浦和のベンチにいた宮本優太らと過ごし、12年ぶりに関東大学リーグを制したチームでキャプテンを務めた。プレーヤーとしての能力だけでなく、人間性も評価されてのプロ契約だった。

 開幕から2節はベンチ入りも叶わなかったが、3節のヴィッセル神戸戦で交代出場しJリーグデビューを果たすと、続くFC東京戦でスタメン出場。第6節の湘南ベルマーレ戦では1ー0の勝利の決勝ゴールを挙げ、この日まで10試合連続スタメンに名を連ねた。その間に3得点3アシストと結果も残し、レギュラーに定着した感がある。

 圧巻だったのは前節の鹿島アントラーズ戦。この時点で首位の強豪に3-0と快勝した試合で、38分にジュニオール・サントスが相手DFに止められたこぼれを走り込んでダイレクトで左へ流し、フリーになった柏好文の先制ゴールをアシスト、63分には中盤でボールを受けるとドリブルで中央を突破し、そのまま右足を振り抜いて豪快なシュートを決め、2得点に絡んで快勝劇の主役となった。

 浦和戦でも得点にはつながらなかったが、前半は鹿島戦で成功した3-5-2の2トップの後ろでの左インサイドハーフとして、後半はそれまで3-4-2-1に戻してのシャドーとして、前述のようにゴールを狙い、チャンスメークに絡み、またプレスの急先鋒としても相手ボールホルダーを追い回した。

 その采配が確実にチーム力を高めているスキッベ新監督の下、優勝争いにも加わる勢いを見せる広島において、攻守に躍動する満田のプレーから目が離せない。