5月8日の明治安田生命J1リーグ第12節で、FC東京がサガン鳥栖を迎えた一戦。前節で5失点を喫して急務だった守備の立て直しで、センターバックに起用されたのが岡崎慎だ。今季リーグ戦初出場を初先発で飾り、フル出場。周囲と声をかけ合わなかったことが良かったというが、その理由は?

上写真=岡崎慎が初出場。流れからの失点はなく、敗れたから喜びきれないものの、一定の手応えを得た(写真◎J.LEAGUE)

■2022年5月8日 J1リーグ第12節(味スタ/15,822人)
FC東京 0-1 鳥栖
得点者:(鳥)堀米勇輝

「自分は縦パスを当てなきゃいけない選手」

 森重真人、エンリケ・トレヴィザンとセンターバック2人を負傷で欠くFC東京。アビスパ福岡との前節で木本恭生と組んだのは、本来は左サイドバックの小川諒也だった。しかし、今季最多の5失点を喫して1-5で敗れた。

 守備の崩壊を止めなければならないこのサガン鳥栖とのゲームで、小川はいつもの左サイドバックへ戻った。センターバックに入ったのは、岡崎慎。良かったこととして挙げたのが、センターバックのパートナーである木本恭生や、アンカーの青木拓矢と「声をかけ合わなかったこと」だった。

「あまり試合中に話していないです。木本選手の特徴はわかっていたので、最低限のラインアップぐらいで、大きく破綻したら声をかけ合おうとしていましたが、それほど崩れていなかったしスライドも間に合っていたので、何かを話さなくてもできていました」

 余計な声をかける必要もなく、落ち着いて鳥栖の攻撃に対処していたということだ。青木とも同じ。

「青木選手は本当にいいところにいてくれて、あともう少しだけ動いてくれればというところで声かけしただけで、いつもいいところにいてくれるので深く話すことはありませんでした。前半のように後半もやろう、というぐらいしか出なかったので、それは逆にいいことだったと思います」

 今季初出場で初先発。12分には菊地泰智に深くに入り込まれて狙われたが、足を伸ばしてブロック。これでリズムが出たか、守備は安定して90分を戦い抜いた。「思っているよりも良くはなかったですけど、結果的に1失点はフリーキックを決められたものなので、少しはポジティブな要素はあったかな」と、流れの中で崩された失点はなかったことに一定の手応えは得ている。

 アルベル監督は前節で小川を起用したのは、福岡の空中戦を警戒したからだと説明したが、鳥栖戦で岡崎をピッチに送り出したのは、ビルドアップの強みを生かすためだったと明かした。そこにこそ「自分は縦パスを当てなきゃいけない選手」という岡崎のプライドが生かされる。

「もっとパスを通さなければいけないし、サイドチェンジのパスが何回も弾き返されました。森重選手やエンリケ選手とポジションを争うには、あそこを通してこそ勝負できるんです。自分の特徴を120パーセント発揮したときにやっと勝負できる選手たちなので、だからこそ負けたくなかったし、この試合にかけていた思いは強かったのでかなり悔しい」

 アルベル監督は長い距離のパスを多用する点については、改善を要求しているという。岡崎も思わず苦笑いだ。

「そこはずっと言われていて、自分も気持ちよくなって狙ってしまうんです。一本通れば、次も通るだろう、と。通ればチャンスになるのはわかってますからね。ディエゴ(オリヴェイラ)選手や永井(謙佑)選手、山下(敬大)選手と裏抜けがうまい選手がいて、顔を上げて目が合うと蹴ってしまう。監督には『判断してほしい』と言われています。蹴るのはいいけれど、チーム状況と90分の試合展開の中でフィフティー・フィフティーのボールを出すべきタイミングなのか、シンプルに横につないでリズムを作るべきかを判断してほしいと」

 もちろん、修正点として認識している。しかし、監督の意見を受け入れてからどう行動すべきかを「判断」するのも、また必要なこと。

「言い方は悪いけど、萎縮していたら良さがなくなりますからね。自分は縦パスを当てなきゃいけない選手だし、裏のパスもサイドチェンジも通さなければいけない選手だから、怯えてマイナスな選択ばかりをするのも良くないし、もちろんムキになって蹴りまくるのも良くないと思います。そこは試合や練習でちゃんと判断していければいいと思います」

 森重もエンリケ・トレヴィザンも復帰には時間がかかる。FC東京の守備を整えるためにも、岡崎の成長と意地が両方とも不可欠だ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE