クラブの悲願だったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)は、グループステージでまさかの敗退。川崎フロンターレは苦しい時を過ごしている。次なる目標はリーグ3連覇を含む国内3冠。鬼木達監督は改めて、高い目標に向けて選手に多くを要求していくつもりだ。

上写真=鬼木達監督はACLでの敗退を受けて、改めてファイティングポーズを取る(写真◎スクリーンショット)

「選手には常に高いものを目指して貪欲に進んでもらう」

 国内3冠。J1リーグ3連覇。ACLで敗れてしまった川崎フロンターレの次の目標だ。鬼木達監督と選手たちは、次の偉業達成に向けて、敗退の苦しみをのみ込んで動き出している。

 鬼木監督は今季の進化のキーワードに「スピード」を挙げてきた。悲願のACLを逃したからといって、変えるつもりはない。

「スピードという言葉が独り歩きしても困ってしまうのですが」と鬼木監督は断ってから、狙いを改めて整理する。

「その部分で海外のサッカーと比べると遅れを取っているのは確かです。自分たちが追いつくために、いろいろなスピード、つまりパススピードも移動のスピードも考えるスピードも意識したいと思っています」

「ヨーロッパのチャンピオンズリーグでさえ、ちょっとしたエラーで勝負が分かれるわけです。ああいう舞台でもそうですから、自分たちはもっと緻密にやらなければいけないし、スキを突いていかなければいけないと思っています」

 レアル・マドリード(スペイン)が準決勝第2レグでマンチェスター・シティ(イングランド)からアディショナルタイムに逆転した事実を例に挙げて、その意味を定義づける。

 今年のチームがスタートしてから3カ月だが、「まだ成果は出ていない」というのが鬼木監督が考える現在地だ。つまり、ここからもっと良くなっていく余白が残っている。

「そこは言い続けることが大事ですが、でもあくまでそれがベースであって、また違うところももっともっとやらなければいけないんです。そのバランスは非常に難しい。スピードと言いながら、スピードが上がりすぎてエラーが出ているシーンもあるので、本当は一貫してやっていくべきものだと思うけれど、その時その時で何が一番重要視しなければいけないことなのかを見極めていきます」

 スピード、というと、とにかく速くすることに目が向かいがちだが、速いことも、あえて遅くすることも、同様に「スピード」である。

 4月30日にACLの敗退が決まってから日は浅いが、鬼木監督も黙考の時間を過ごしてきた。「一番重要視しなければいけないこと」とは何なのか。

「やっぱり、攻守ともにアグレッシブにいけるかどうか、ですよね。圧倒して勝っていこうと監督になってから言い続けてきていますが、ギリギリの戦いが多い中で求めすぎてもいけないかな、と思うこともあったんです。でも、今回負けてしまって、自分のその考えがそもそもいけないんじゃないか、と考えました。もう一度、自分たちが高い目標に向かってやっていきたい、そのためにはもっともっと選手に対して、調子がいいとか悪いとか、体が動くとか動かないとかではなくて、常に高いものを目指して貪欲に進んでもらおうと思っています」

 負けて改めて確信する「アグレッシブ」。その信念を最初に示すのが、5月7日の清水エスパルス戦になる。