AFCチャンピオンズリーグ(ACL)ではグループステージ敗退の憂き目にあった川崎フロンターレ。今季からこのクラブに加わった瀬古樹は広州FC(中国)との2試合の出場にとどまった。本職ではない右サイドバックとしてのプレーだったが、そこで「進化の種」が見えた。

上写真=瀬古樹はACLで出場した2試合で得たものを、チームのパワーアップのために使うつもりだ(写真◎AFC)

「でもそれで満足しているわけでもなく」

 今季から川崎フロンターレでプレーする瀬古樹にとって、初めて参加するACLとはどんなものだったのか。出場は広州FCとの2試合。ともに右サイドバックとしてフル出場している。

「チャンスをもらった時間で何かできれば、という2試合でした。その中では自分らしさは随所に出せたし、でもそれで満足しているわけでもなく、現状としては変わっていないと思います」

 横浜FCから移籍してきて、浦和レッズとのスーパーカップに出場したものの、リーグ戦では出場がないまま、ACLに臨んだ。だから、この2試合は大きな意味があった。

「初めての移籍でこのクラブに来て刺激的な毎日を送っていて、自分を大きくするために来たので、その中で探りながら日々の練習からやってきています。リーグ戦に絡めていないもどかしさはあるけれど、それは自分の問題でもあるし、自分次第なので、向き合って日々取り組めています」

 横浜FCではキャプテンも務めていただけに、冷静な分析と語り口にはリーダーのオーラが漂う。

 サイドバックは本職ではない。それでも、このチームでのサイドバックの重要性をかみ締めながら、アジアの舞台で一定の手応えを得た。

「サイドバックは横浜FCのときにやる機会もありましたが、ゴールに関わるプレーができればと思っていました」

 それでも、広州との2試合目の決勝点は、高い位置に出て右サイド受け、小林悠に斜めに差し込んだパスがきっかけになって生まれている。

「フロンターレではサイドバックは重要なポジションで、攻撃参加と守備のプレスを切り替えていける距離感や立ち位置が大事になっています。自分なりにできたところはありますが、もっとできたらと思うのは、やっぱりゴールに関わるプレーですね。もっと前線を追い越していく動きをサイドバックとしてできればよかった」

 このポジション、出ずっぱりの山根視来の競争相手が強く求められている。本来は中盤の選手である瀬古がコンバートされたということは、鬼木達監督の信頼の高さの表れでもある。日本代表選手を突き上げ、追いつき、追い越せというメッセージ。

「このチームの練習の質の高さは最初に来たときから肌で感じていました。それは求めていたことでもあったので、習慣づいてやっていけたら伸びると感じてきて、それはいまでもそうです。これまでできていたと思っていた一つひとつの技術が、『できたつもり』だったんだ、というレベルの高さを日々感じています。それが刺激になっていますね」

 ここからは国内3冠、特にJリーグ3連覇という目標を達成するための日々になる。

「ACLの敗退が決まりましたけど、出場したメンバーは限られたところもあるので、出場機会の少なかった選手の突き上げが必要だし、スタートから出ている選手を脅かす存在になればチームは成長して結果が出てくると思います。チーム全体で変えていきたいと思います」

 その役を、瀬古が先頭で担う。山根と争う右サイドバックとしても、もちろん「こだわっていきたい」と力強く口にする中盤の一員としても。川崎Fの次の進化は、この男から始まる。