明治安田生命J1リーグ第10節の柏レイソルとサガン鳥栖の一戦。ともに強度の高い自慢のスタイルをぶつけ合う白熱の90分となった。前半にスローインとFKから鳥栖が先行し、後半に柏が1点を決めて追い上げるものの、鳥栖がさらに2点を追加。最後まで見どころの多い試合は、鳥栖が快勝を収めた。

上写真=田代雅也のJ1初ゴールで鳥栖が2点をリード。最後まで攻め続けた(写真◎J.LEAGUE)

■2022年4月29日 J1リーグ第10節(三協F柏/5,114人)
柏 1-4 鳥栖
得点者:(柏)細谷真大
    (鳥)本田風智、田代雅也、福田晃斗、飯野七聖

「もっともっと面白い、観客を沸かせる試合を」と川井監督

 スピードと力強さ。柏レイソルもサガン鳥栖も持ち味が似ているところがあるからこそ、遠慮なくぶつけ合うことができた。そこに、雨が加勢する。ボールがよく走る分、選手たちのプレーのスピード感も上がっていく。

 序盤は柏が押し込みつつ、跳ね返してどんどん前に出ていく鳥栖が入れ替わるように攻め、ターンごとの攻守に迫力が増していく。イーブンな展開だからこそ、セットプレーからゴールが生まれたのも必然かもしれない。

 27分、鳥栖は左からのスローインでジエゴがペナルティーエリア内に投げ、福田晃斗がバックヘッドで中央に送ると、フリーになっていた本田風智がヘッドで力強く押し込んで先制した。前半終了間際の45分には右サイドからのFKを小野裕二がゴール前へ送り、柏DFが見送ってゴール前を通過したその向こうから田代雅也が突っ込んできて押し込み、J1初ゴール、リードを2点に広げた。

 柏は後半開始から武藤雄樹と北爪健吾を投入すると、これがさっそく効いてくる。投入から5分で思い切りミドルシュートを狙った武藤がゴールへの意欲をむき出しにして、さらにその5分後には追撃のゴールを導く。右からのマテウス・サヴィオのクロスがこぼれて武藤がシュート、これを細谷真大がコースを変えてゴールに送り込んだ。

 武藤はさらに5分後にビッグチャンスを迎える。中央から細谷が強引に持ち込んで強烈なシュート、GK朴一圭がなんとかパンチで逃れたこぼれ球を押し込むだけだったが、勢い余ってゴール上に外れてしまった。柏にとってはこれが痛かった。64分、鳥栖が完璧な崩しで突き放したからだ。

 左サイドにドリブルで運んだ本田が外側の小野に預けると、リターンパスを内側で受けてそのままペナルティーエリアの中へ、マイナスに戻したところに入ってきた福田晃斗が右足でていねいにゴール右に送り込んで、再びリードを2点とした。

 ここからともに交代選手を次々に送り込んで、さらに攻撃にパワーを注いでいく。次のゴールを決めたのも鳥栖。83分に左サイドでプレスで奪ってから攻め、そのこぼれ球を拾って2次攻撃、福田が右奥に柔らかく届けると、スプリントをかけて入ってきた飯野七聖がヘッドでゴール左に送り込んで、こちらもうれしいJ1初ゴールを決めた。

 鳥栖はリードしても攻撃の姿勢を崩さず、柏も追いつくために前へ前へと突き進む。ともに崩しのアイディアも豊富で、集中力もスピードも最後まで衰えない好ゲームだった。

 快勝した鳥栖の川井健太監督は、もちろん満足の表情だ。

「セットプレーから点を取れたのは良かったので武器にしていきたい。流れの中では、目指しているスペースを狙うことへの選手の目線が合ってきたので、いい状態になってきたかなと思います」

 スローインとFKから2得点、左右に振ってスペースを攻略しての2得点と、バリエーションも見せた。ただ「現状維持が嫌いなので、もっともっと面白い、観客を沸かせる試合をしていきたい」と勝ってなお貪欲だ。

 ネルシーニョ監督は「試合の入りが悪く、後半にも引きずってしまった」とスローインからの失点を悔やむ。負傷から戻ってきた武藤を後半から起用してリズムを変え、1点は返したものの、連続失点で、これで3連敗となった。小屋松知哉、中村慶太、高橋祐治とここまでの主力が出場しなかったが、「連戦を考慮したことと、効率の良い働きができていなかったので、出場機会に飢えている若手にチャンスを与える意味も込めた」と意図を明かした。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE