上写真=山根視来のシュート系のクロスが美しいゴールを呼んだ(写真◎KAWASAKI FRONTALE)
「押し込んだときに握り倒す」
JDTの心を折るには十分な完璧アシストだ。山根視来から小林悠へ。チームの2点目と3点目を導いたアシストは、技術の粋が重なり合ったものだった。
まずは1-0でリードしたあとの31分。右サイドで家長に預けてインサイドを駆け抜ける。その間に家長が横パスで相手の目を中に向けた次の瞬間、脇坂泰斗が左足でワンタッチパスを山根に優しく入れて完全に守備ラインを崩した。あとは山根が中央の小林に渡すだけだった。
「アキさん(家長)が飛ばすイメージを持っていて、泰斗も同じ絵を描いてくれて3人でうまく共有できたシーンでした。最後はオニさん(鬼木達監督)がいつも、キーパーと1対1になっても横につけと言っているので、それが形になった点だと思います」
脇坂からのパスもイメージ通り。
「ワンタッチで来ると思ってました。そのタイミングで出ていましたし、最高のパスでした」
完璧なコンビネーションに続いて、43分の3点目。またも家長に渡して走ると、今度は空間を使って上に蹴って落とすパスが送られてきて右裏に抜けた。そこで選択したのは、シュートのような速くて強いパス。
「走って中を見たときに、キーパーとディフェンダーの間に入れるのはあの距離からは難しかったので、マイナスに来てくれるかな、と。あれは10回やったら2回ぐらいしか成功しないんですけど、前半のうちに3点を取って決めたかったので、強気にクロスを入れたのが点につながったかなと思います。たまたまですけど、悠さんがよく枠に決めてくれました」
20パーセントの可能性にかけて、勝った。腰を中央に向けて、インステップでストレートに強いボールを少しマイナス気味に入れると、まさにそこに小林がいて、右足で面を作ってゴール左に流し込んだ。
(小林の述懐「映像で見るよりボールが速くてシュートみたいなボールが来たので、面を作って当てるだけで勢いのままいくと思いました。あとは感覚ですね、何度も経験しているので。あのボールならあそこに当てれば左隅にいくな、という感覚があったので、ベテランのゴールかな」)
この完勝で首位。残り2試合も勝ち切って、堂々の突破を決めたい。次の相手は韓国の蔚山。昨年はラウンド16でPK戦で倒され、今大会初戦ではアディショナルタイムてなんとか同点に追いついた相手。
「川崎がほかのチームと違うところは、押し込んだときに握り倒すことだと思います」
その原点を思い出すようなJDT戦の快勝に、蔚山戦勝利のヒントが見えたのではないだろうか。