FC東京は20日、明治安田生命J1リーグ第2節(延期分)で名古屋グランパスと対戦し、0-0で引き分けた。勝ち点1を手にしたが、古巣との対戦にCBとして先発した木本恭生は、引き分けを勝利に変えていくために、さらなる向上を誓った。

上写真=古巣である名古屋との試合にCBとして先発した木本恭生(写真◎J.LEAGUE)

もっとピンチをつくらせないように

 昨季は名古屋の選手としてプレーしていた木本は、古巣の強みをよくわかっていた。だからアタッカー陣の力量を警戒した。

「昨シーズン一緒にやって、レベルの高い選手がいて、相手にとって嫌な選手であることは分かっていました。マテウス(・カストロ)や(柿谷)曜一朗くんには今日も苦しめられたと思います」

 マテウス・カストロの鋭い突破やC大阪時代から知る柿谷曜一朗の技術とシュートセンスは、対応する守備者としては厄介極まりない。その意味で言えば、無失点で試合を終えたことは評価できる結果と言えるだろう。

 ただ、それでも木本は勝ち切れなかった点に言及し、課題にフォーカスした。

「ピンチはつくられていて、キーパー(ヤクブ・スウォビィク)のビッグセーブで勝ち点を拾っている現状があるので、もっとピンチをつくらせないようにやっていきたい」

 22分にマテウスにクロスを許し、仙頭啓矢に通されそうになった。木本がクリアしたが、鋭利なカウンターや前線に質の高いアタッカーをそろえる名古屋に対して一瞬でも気を抜けば、失点につながる、そんな緊張感が常にあった。ボールはFC東京が握る展開ながらなかなかゴールが生まれないことでリズムが乱れ、つなぎのミスから危ない場面も招いた。木本自身もパスが乱れる場面が見られた。

 試合は0-0に終わり、FC東京はこれで3戦連続のスコアレスドローという結果となった。アルベル監督も振り返ったように、勝てるチャンスは十分にあっただけに惜しい試合とも言える。

「点を取れていないことについて、前線の問題だけじゃなくて後ろからの配球の問題もある。この数試合はなかなか良いボールを供給できていなかった。後ろと前の距離感やボールの質をもっと上げていかないと」

 ビルドアップは木本も自信を持つ部分だ。無失点を続ける守備の堅さを維持しつつ、攻撃面でさらなるブラッシュアップが必要と指摘した。前線の得点力ではなく、むしろCBである自分の責任として。

「去年まであった堅守速攻のスタイルは今日の試合でも出た部分があった。速攻と遅攻の使い分けはもっとうまくできないとチャンスは増えないかなと思います。チャレンジすることが必要だと思っています。自分も含めて」

 選手一人ひとりが位置取りにばかり気を取られて、何のためにその位置に立つのかが疎かになっては本末転倒だ。勝利のためには、チャレンジすることも必要で、的確なポジションに立つのはあくまで戦術のベースの話。木本が指摘するのは、そのベースの次の段階として、『そこに立って、どう振舞うか』ということだろう。

 ルヴァンカップ優勝を果たした名古屋でのプレーを1年で終え、覚悟をもってFC東京に加入した木本。向上への意欲は、人一倍強い。無失点を継続するだけでは、当然ながら満足はできない。