驚きのスピードだった。4月9日の明治安田生命J1リーグ第8節、川崎フロンターレは柏レイソルを迎え、前半アディショナルタイムに先制した。マルシーニョが左サイドを自慢の快足で破って、レアンドロ・ダミアンにアシスト。「信じて走った」結実だった。

上写真=マルシーニョの笑顔が輝く。決勝点のレアンドロ・ダミアン(右)、今季初先発のジョアン・シミッチ(中)とともに(写真◎J.LEAGUE)

■2022年4月9日 J1リーグ第8節(等々力/17,471人)
川崎F 1-0 柏
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン

「落ち着いてパスをすることができました」

 スピードスターとはこの人のことだ。マルシーニョ。川崎フロンターレの左の翼が、自慢の快足を飛ばして3試合ぶりの勝利を力強く引き寄せた。

 その瞬間は、前半のアディショナルタイム2分にやってきた。最終ラインから谷口彰悟が縦に送り込むと、遠野大弥がハーフウェーライン付近に戻りながら左足で大きなフリックパスを左サイドへ。中村慶太との競争で一気に抜き去ったマルシーニョは、そのままゴール方向へと向かった。そして、短くマイナスへ。

「練習の中から日頃やっているようなプレーが出ました。大弥から相手の裏に出ましたが、自分も信じて走っていたのでうまく相手から取ることができました。中を見たらダミアンがフリーでいたので、落ち着いてパスをすることができました」

 レアンドロ・ダミアンが体を開きながら右足でゴール右に送り込むワンタッチフィニッシュ。見事な先制ゴールだった。

 その前に「幻のゴール」があった。26分、遠野の右CKを山村和也が中央でシュート、相手に当たってこぼれたボールに素早く反応したマルシーニョがすかさずシュートを放ち、右ポストに当たってゴールに飛び込んだ。しかし、山村がトラップしたときにハンドの反則があったとして、取り消されている。

「そういうことが起きることもあるので、前を向いて頑張っていきたい」

 自らのアシストで勝ったからこそ、笑顔で振り返ることができる。後半には前線にダッシュしたところで足を痛め、自ら交代を要求した。67分にピッチを去ったが、「連戦続きで疲労が出ましたけど、代わって入った選手も活躍してくれたので良かった」とチームとしての勝利を喜んだ。

 5試合連続先発で、2ゴール1アシスト。昨年夏に加わった快足ウイングが、覚醒の時を迎えている。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE