上写真=ワールドカップではスペインと日本が同組に。「日本にとって難しい。でも日本を応援しますよ」(写真提供◎FC東京)
「成長スピードは予想より速い」
「まずは対戦相手よりも自分たちのプレーが大事です」
アルベル監督は浦和レッズ戦に、いつもと同じ向き合いかたで臨む。
ただもちろん、綿密な分析に基づいた上で規定される「自分たちのプレー」である。どの相手にもまったく同じ戦い方を押し通すわけではなく、相手の強みも弱みも洗い出してから、自分たちのプレーを形作っていく。相手あっての自分たち。
ここ2試合でも、それは顕著だった。第6節の横浜F・マリノス戦では「相手の最も危険な攻撃はウイングのスピード」と分析した。速さが生きるカウンターアタックは、こちらがボールを失った瞬間に発動される。だから逆に、最初から相手がボールを持っていたほうがリスクが低減するとして、こちらがボールを保持することにこだわりすぎなかった。第7節のヴィッセル神戸戦は「ボールを相手に与えるとクオリティーの高い選手たちに押し込まれる危険性があった」から、しっかりとボールを大切にするプランだった。
「立ち上がりに神戸に支配を譲ったのは大きな改善点です」
ただ、プラン通りにいくとは限らないのがサッカーだ。神戸戦では先制されながら、逆転に成功したことは評価したが、立ち上がりの停滞が目下の課題と強調する。浦和は川崎フロンターレや神戸、そしてもちろんFC東京自身のように、自分たちでボールを運ぶことを好むスタイルだ。アルベル監督は、いわば『似た者同士』の浦和について試合前に詳しくは語らないが、ボールを渡せば相手のゲームになる。神戸戦で見せたようなナイーブな立ち上がりは望んでいない。
一方で良い面もある。「勝負にこだわるメンタリティーがあるので、成長スピードは予想より速い」と、立ち上げからわずか3カ月で見せる戦いに強くうなずく。選手の高い理解と意欲に支えられて、4勝2敗と結果も残している。川崎Fや横浜FMには内容もスコアも惜敗、神戸には逆転勝利と、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場する昨季の上位陣に堂々と渡り合っている。浦和も天皇杯を制してACLに出場する強敵だ。
「サッカーはエンターテインメントで、私たちには素晴らしいものを表現する義務があります。勝ち負けがありますから、負けることもあるけれど、見応えのあるものをお見せすることが任務です」
浦和のリカルド・ロドリゲス監督が徳島ヴォルティスを率いていた2000年、アルベル監督はアルビレックス新潟の監督としてJ2で対戦している。ホームで0-1、アウェーで0-0。初勝利をかけた90分でもある。
勝負の行方を占う「立ち上がり」に注目だ。