ヴィッセル神戸が8日、アンヘル・ロティーナ監督の就任を発表した。3月20日に三浦淳寛監督との契約を解除した後、リュイス・・プラナグマ・ラモス氏(ヤングプレイヤーデベロップメントコーチ)が暫定監督として指揮を執っていた。ロティーナ新監督は10日の古巣セレッソ大阪戦から指揮を執る。

上写真=会見でチーム作りの考え方を説明するロティーナ新監督(写真提供◎VISSEL KOBE)

守備の立て直しに期待(永井SD)

 オンラインで開催された就任会見で、ロティーナ監督はまず「チャンスを与えてくれた」クラブに感謝を述べ、下位に低迷する状況の改善に意欲を示した。

「まずお伝えしたいのは、このチャンスを与えていただいて本当に喜んでいるということです。会長、強化部をはじめ、自分がこのクラブを指揮するのに適任だと判断してくださったステークホルダーの皆さんに感謝したいです。いまこのタイミングでヴィッセル神戸に加わることができるというのは、自分はサッカーからもらったプレゼントだと思っています。偉大なクラブ、選手たちと仕事ができることは喜ばしいことです。
 確かに状況は、ファン方々やクラブが想像していたものとは違うものかもしれないですが、自分にとってはこの偉大なファンとクラブのもとで仕事ができるワクワク感があります。
 戦術的なところはこれからやり込んでいければと思いますが、まず重要だと思っているのは、ロッカールーム、そしてクラブを形成するスタッフとファンが一体になって雰囲気をつくっていくことだと思っています。全員で団結していい雰囲気を作り出すことができれば、より簡単な形で結果はこちらに転がり込んでくると考えています」

 神戸は現在、J1で9試合を戦い、4分け5敗。降格圏の17位に低迷する。得点はわずかに5点。一方で失点は15。試合消化数が多いこともあるが、失点数はリーグワースト。守備の崩壊は顕著で、立て直しが急務だ。

 そこで白羽の矢が立ったのが、ロティーナ監督だった。守備の整備には定評があり、手堅い守備から攻撃につなげるスタイルはセレッソ大阪時代も清水エスパルス時代もチームのベースになっていた。ともに会見に登壇した永井秀樹スポーツダイレクターも「戦術のすべてをこの場で語ることは難しいですが、まず守備の構築について素晴らしいものがありますし、現状、非常に失点が多いチーム状況を考えたときにそこには期待しています。そして(今回の招へいによって)ヴィッセルのプロジェクト、哲学そのものが変わるということではまったくありません。ロティーナさんの中でもいい攻撃をするために守備が重要だという考えがある方なので」と新監督の招へい理由を説明し、期待感を口にした。

 10日にはロティーナ監督の古巣でもあるC大阪戦が控えており、16日からはタイで16日間で6試合を戦うACLのグループステージに臨む。非常に難しい時期の就任となったが、「日曜日の試合に向けては攻撃面のコンセプトを今日明日のミーティングで説明できればと思っています。ACLに向けてはタイトなスケジュールでありますが、その間に可能な限りチームに色々なコンセプトを落とし込めるように、ビデオミーティングだったり、戦術的な練習をやれればと思っています」とチーム作りへの意欲を示した。「私たちヨーロッパ人にとってはチャンピオンズリーグは一番重要な大会です。(アジアのチャンピオンズリーグである)ACLを大事にしながら、戦術的な意味ではプレシーズンという考え方も持って、チームを構築していきたい」とアジアの舞台を戦いながら、ロティーナ色を浸透させる考えを明らかにした。

 永井SDの言葉にもある通り、神戸は自分たちで主導権を握ってゲームを進める攻撃的なサッカーを目指してきた。C大阪や清水でロティーナ監督が目指してきたサッカーとは少し趣が異なる部分もある。その整理がつくのかどうかは気になるところだが、新指揮官は自身の考えを説明した。

「どこの国に行こうと一番重要なのは選手で、どういうチームが形成されているかということですが、同時に、その特定の国にあるサッカーのアイディアや考え方、そして特定のクラブにあるサッカーのアイディアや考え方を知ることが重要だと思っています。ですからヴェルディやセレッソで仕事をしたときにまず重要視したのは、まずそのクラブの歴史や考え方を理解することでした。
 日本にいた5年の間、ヴィッセル神戸はフォローしてきましたし、実際、対戦もする中である程度は知っていると認識しています。神戸は攻撃的なサッカーを好み、ポゼッションするのが好きなチームだと考えています。そのチームが持っている良いところ、プレースタイルの特徴というところに自分たち(=ロティーナ監督とスタッフ)のやり方をうまくつなぎ合わせることができればと思っています。自分たちの考え方とクラブのやり方がうまく組み合わせることで良いサッカーが展開できる。そして重要なのは、ファンに気に入られることと結果を出すこと。そういうものを構築していければと思っています」

 今季、アジア制覇や国内のタイトル奪取を目標にスタートした神戸は低迷し、三浦監督との契約解除を決断。それと同時に東京V時代にパワハラ行為があったと認定され、現在、1年間のS級ライセンス停止処分中の永井氏がスポーツダイレクターに就任したことで、『時期尚早』との批判を浴びることになった。この日の会見の冒頭で、永井SDは「このたび私事で、ファン・サポーターから世間を騒がせてしまったことを、あらためてですが、この場を借りてお詫び申し上げます。しっかりと反省、改善していく中で、サッカー陣としてヴィッセル神戸のために、全身全霊をかけて取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いします」と挨拶し、新体制への理解を求めた。

 ピッチ内もピッチ外も神戸の2022シーズンはここまでのところ、望む形では進んでいない。それでも「現状、われわれはすべてにおいて何一つ諦めていません。タイトルを目指して戦っていきたいと思っています」と永井SDは変わらず目標達成にまい進すると強調した。

 ここから5月末まで連戦が続く。神戸はリスタートに成功し、上昇曲線を描けるかーー。

【新スタッフ体制】
・監督:ロティーナ ※新任
・ヘッドコーチ:イヴァン・パランコ ※新任
・コーチ:菅原智
・アシスタントコーチ:北本久仁衛
・GKコーチ:アレックス
・ヤングプレイヤーデベロップメントコーチ:リュイス
・分析コーチ:吉村俊希
・フィジカルコーチ:トニヒル・プエルト ※新任
・フィジカルコーチ:山崎亨
・コンディショニングコーチ:梅木暁