上写真=安部柊斗が今季初ゴール。「自分らしさを出して結果を求めたい」(写真◎J.LEAGUE)
■2022年3月26日 JリーグYBCルヴァンカップ第3節(味スタ/6,829人)
FC東京 2-1 湘南
得点者:(F)安部柊斗、三田啓貴
(湘)池田昌生
「何回も動き直しができる」
安部柊斗は、落ち着いていた。目の前に構えるGK富居大樹を、右足のインサイドキックでていねいに破って先制。これが安部にとって待望の今季初ゴールだ。
湘南ベルマーレを迎えたルヴァンカップ第3節。39分に生まれたこのゴールは、裏のスペースへの強い意識がもたらした。
「裏にボールがほしくて走っていて、相手のミス絡みでちょうどいいところにこぼれてきました。ファーストタッチがうまくいったので、キーパーがよく見えていて落ち着いて流し込めました」
センターバックの森重真人や木本恭生、アンカーの平川怜から、安部と東慶悟のインサイドハーフへ、センターフォワードの山下敬大へと何度も縦パスが入ってくる。先制ゴールにつながった縦パスも、森重からのものだった。
2020年のプロ1年目もインサイドハーフでプレーして、そのときのような生きの良さだ。
「去年がダブルボランチでなかなか前に行くの難しかったですけど、今年は1年目と同じインサイドハーフなので、そういったシーンが増えるのは必然です。むしろそこは持ち味でもあるので、何回も動き直しができるところは変わらずやっていきたいと思います」
湘南は守備のときには5人が最終ラインに構えるから、3トップのFC東京で右ウイングの三田啓貴とセンターフォワードの山下の間を安部が出ていこうとすると、ちょうど湘南の3センターバックの左、杉岡大暉が行く手を阻む格好になる。そこをすり抜けた工夫は、「仲間を見る」こと。
「三田選手が落ちると相手のサイドの選手が食いついて裏が空きます。だから、自分からアクションを起こしていくこともありますけど、仲間を見てアクションしたほうがもっとスペースを見つけやすいですね」
三田はポジションこそ右ウイングだが、幅を取ってから縦に突破するよりは、左利きを生かして中に入っていく動きで強みを発揮する。三田が先に動いて相手も引き連れていってもらえば、スペースが生まれる。そこを安部が狙う。時間差コンビネーションだ。こうして、「駆け抜けるインサイドハーフ」という役割に手応えをつかんだのは間違いない。
「今日みたいな裏への抜け出しがチャンスになります。2列目からだとディフェンダーはついていきにくいと思うし、飛び出して点を取ることは必要になってくるので、あきらめないで走っていきたい」
アルベル監督はまず守備の貢献度の高さを称賛する。
「素早いプレスをかけるプレーで、彼の守備への貢献度は本当に大きい。私たちのプレースタイルにおいて、彼がさらにボールとともに攻撃面でプレーすることを期待しています。彼がまるでハイブリットカーのように守備でも貢献すると同時に、攻撃でも大きく貢献する選手に成長することを期待しています」
アルベル監督も、もっともっと攻撃に関わってくれなくては困る、ということだ。次に狙うのは、リーグ戦での初ゴール。1週間後の横浜F・マリノス戦がその喜びの舞台になるかもしれない。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE