FC東京の三田啓貴がいま、新しいスタイルの中で感じているのは「マインドチェンジ」の必要性だ。勝てばなんでもOK、とするつもりはないのだ。ファン・サポーターも含めた意識改革をともに目指し、新しいFC東京を作り上げる意欲に満ちている。

上写真=三田啓貴は次の湘南戦に向けて「1試合も無駄にしたくない」(写真提供◎FC東京)

内容も結果も、個人もチームも

 FC東京は今季、公式戦で3勝1分け2敗。リーグ戦で3勝1敗、ルヴァンカップで1分け1敗という内訳だが、コロナ禍で活動停止期間があったにもかかわらず、しっかり勝ち点を積み上げている印象だ。

「自分たちがやりたいことをできている部分とできていない部分があります。それでも結果を残せている」

 新しいスタイルを全員で使いこなせるようになるには長い時間がかかる、ということはアルベル監督自身が認めている。三田は、勝ち点を積み重ねていることには胸を張る一方で、このチームはそこから次のステップに向かう途中である、と訴える。

「結果を残しながら成長できているのはいい部分だと思いますけど、勝っているときでも自分たちのサッカーができなければブーイングするぐらい、サポーターもサッカーの質を求めるようにマインドをチェンジしていってほしいですし、自分たちのサッカーが完ぺきにできて面白い内容もついてきて勝利して、みんなで喜びを分かち合いたいと思っています。だから、FC東京ファミリー全体で質を上げていきたい」

 内容だけでも結果だけでもなく、その両方を同時に求めるチャレンジだ。その中にあって、ベテランの域に入った背番号7は「チームのためにプレーして、でも自分の結果にもこだわらないと生き残っていけないので、バランスよく頑張っていきたい」と、こちらも個人とチームの両方を追い求めていく。

 そのためには、スタイルを貫いて少しでも改善していくしか方法はない。

「僕たちが掲げているのは、ボールを支配して、守備でもすぐに奪い返してマイボールにして、ゴールに迫るサッカーです。まだまだ完成度は低いかもしれないけれど、積み上げていく過程を見に来てほしいし、自分たちも体現したいと思っています」

 三田が強みと誇る「ボールに関わりながらゴールに向かう」自身のプレースタイルは、特にボールを保持する局面に効果を発揮する。「簡単に前向きの選手を使う意識や、シンプルにプレーすることを心がけることが大事」というのが、具体的なポイントだ。今季はここまでリーグ戦は3試合で途中から出場、ルヴァンカップ1試合で先発出場している。プレー時間も徐々に伸ばしていてきた。

「前からプレッシャーをかけられたときには広島戦や京都戦でボールを失う場面がありました。少しボールを落とす質やサポートの質を上げないといけないし、あうんの呼吸というか、ここに来たらここにボールが落ちてくるというような共通認識を持たないといけない」

 それを深めるためには、少しの時間も無駄にできない。次は3月26日、ルヴァンカップ第3節の湘南ベルマーレ戦だ。

「結果にこだわるところももちろんですが、このサッカーを完成させるのに1試合も無駄にしたくありません。自分たちのスタイルを出していきたい」

 結果と内容に向けて、チームと個人のために貪欲に進む背中を、FC東京のファミリーたちはしっかりと目に焼き付けている。