川崎フロンターレの鬼木達監督がその重要性を強調してきた開幕5連戦を3勝1分け1敗で乗り切り、一段落。しっかり休養とトレーニングを重ねて、続く名古屋グランパス戦で再スタートを切る。ここまでの5試合で見えてきた「左ワイド」「2年目」というキーワードを整理する。

上写真=鬼木達監督は名古屋戦に向けて「怖がっていると自分たちの試合ができない」と改めて強気を求めた(写真◎スクリーンショット)

「みんなで試合ごとにいい形で」

 チャナティップ、マルシーニョ、知念慶、宮城天、小林悠、遠野大弥。川崎フロンターレで今季、左のワイドのポジションでプレーしてきた選手だ。固定されていないのは、鬼木達監督が悩んでいるのか、あるいはバリエーションを増やしているのか。

「みんなで試合ごとにいい形でやってくれていると思います」

 鬼木監督に率直にぶつけたら、清々しく答えが返ってきた。

「こちらが起用している意図をしっかり理解しながら、その選手本人だけではなくて周りの選手もやってくれています。左サイドで個のスピードを生かすのか、逆にフォワードタイプの選手ならばチームとしてコンビネーションでより中に入って仕事ができるようにするのか、そういう形でずらしながらポジティブにとらえています」

 三笘薫がチームを去ってから絶対的な選手が出てきていないが、それを嘆くのではなく、逆にメリットに変えていく思考回路が見えてくる。だから鬼木監督は「これからもいろいろな選手で争うことになると思います」とも付け加える。

 3月6日のガンバ大阪戦では、58分から左ウイングに投入した宮城天が同点ゴールを決めている。

「途中から出る選手が勢いを与えてくれるのは、もうずっと、重要なことだと思ってきているので、しっかりやってくれているのは力になります」

 アシストしたのも、一緒に58分に入った小塚和季。出番が少ない選手がチャンスで結果を残すことで大きく成長する姿を、鬼木監督は何度も見てきた。

「移籍2年目の(小塚)和季や、(遠野)大弥、(塚川)孝輝、富山から帰ってきて2年目の(宮城)天、それからプロ2年目の(橘田)健人と、このチームで2年目の彼らからは『自分がやらなくては』という気持ちを感じます。昨年はなんとかフロンターレのサッカーに合わせようとしてきたけれど、そういうことではないんだ、より自分をを出すことがチームの力になるんだ、と感じているのではないかと思います」

 自らの力を発揮する自由を結果に変えるかは選手の力量だが、それをピッチの上でトライできるような舞台は整えている。選手たちはいつも「オニさんが自分たちのことをすごく見ている」と話すのだが、まさにその通り。

「見ていてすごく頼もしいですし、メンバーに入っても入らなくても続けてきてくれているので、期待もしていますしリスペクトもあります。当たり前のことを当たり前にしっかりやれるのは素晴らしいですよね」

 そこから抜け出すのは誰なのか。もしくは、最後まで激しい戦いが続いて、変幻自在の左サイドが強みになるのか。左ワイドと2年目の男たちの成長から目が離せない。