上写真=セレッソ大阪戦で初勝利。アルベル監督は決勝点を決めた紺野和也を抱きしめた(写真◎J.LEAGUE)
「重要なのはお互いに支え合うという意識です」
新型コロナウイルス感染症に大打撃を受けたFC東京が、ついに今季初勝利をもぎ取ったのは3月6日のセレッソ大阪戦。アウェーで紺野和也が決めた1点を、途中から10人になりながらも守りきった。これがアルベル体制初白星になった。
アルベル監督は改めて、選手たちのメンタリティーに惜しみない称賛を送った。
「一人少なくても勝負にこだわり、勝利に、成功に飢えていることをピッチで表現してくれたのは評価に値します。退場者を出してからの最後の30分ほどは内容には改善の余地があるものの、勝利にこだわるメンタリティーは素晴らしかった」
それでも、手放しで喜ぶ、というわけではない。「改善の余地」はいくつもあるというが、中でも、退場者が出たあとの戦い方についての言葉に自らの哲学がにじみ出る。
「選手が一人減った状態なら、なおさらボールを支配してコントロールする方向に動くべきでした。しかし、真逆の反応をしてしまったのは反省点です」
1点を守るために引きこもるのではなく、逆に相手にボールを渡さないことで攻めさせないようにするべきである、という発想だ。攻撃のためにも守備のためにも、勝利に近づくにはボールを愛して自分たちの仲間にする。これだけは一貫している。
そんな哲学が、J1では2試合を戦っただけでもはっきり投影されているのが、右サイドバックの人選だろう。昨季まで攻撃的MFとしてプレーしてきた渡邊凌磨を起用している。コロナ禍だから、ではない。
「モダンなサッカーの世界では、サイドバックの役割が広がっていて重要なものを担っています。私が若い頃はサイドバックは一番下手な選手がプレーするポジションでした。でも、モダンなサッカーにおいてはサイドバックが戦術的に多くの役割を担う重要な存在に代わってきました。ですからサイドバックには、技術レベルはもちろん、戦術的にしっかり状況を理解してサイドからも中央からも攻撃参加できる選手を必要としています」
だから、渡邊凌磨だ、というわけだ。
「その意味において、凌磨の成長はうれしく思っていますし、パフォーマンスに満足しています。そしてさらなる成長にも期待していますし、ほかにも長友(佑都)や(中村)帆高という質の高い選手がいます。すべての選手を信頼しています」
信頼、もアルベル監督の哲学だ。それをいよいよホームの味の素スタジアムで披露するときがやってきた。新型コロナウイルス感染症の影響でホーム初戦が先送りになったから、3月12日のサンフレッチェ広島戦は、アルベル監督にとって待ちに待った「ホームデビュー」。
「ホームで皆さんに会えることを待ち望んでいました。彼らにあいさつしたいと思います。新しいプロジェクトはサポーターの皆さんとともに始めているものと認識しています。スタジアムに来てくれる皆さんには、選手が表現する質の高いエンターテインメントを楽しんでほしいと思います」