明治安田生命J1リーグで3試合を終えて、1分け2敗と勝利がない湘南ベルマーレ。3月6日の浦和レッズ戦では山口智監督も米本拓司も、勝負に挑む気持ちの部分で負けていたと猛省した。田中聡は2試合連続フル出場を果たしたが、ピッチの上でどんな気づきを得たのか。

上写真=田中聡はタフな浦和と戦って、反省ばかりだと振り返る(写真◎J.LEAGUE)

■2022年3月6日 J1リーグ第3節(埼玉/19,144人)
浦和 2-0 湘南
得点者:(浦)江坂任、馬渡和彰
    (湘)なし

「持ったときに前を見ることができなかった」

 田中聡は浦和レッズ戦で45分ずつ、2つのポジションを担当した。前半は3センターの中央、後半は同じく左である。

 山口智監督は浦和の攻撃を封じる準備をしてきたが、それが「重たくなってしまった」という言葉で振り返った。田中はピッチでの現実を、「はまらない」と表現した。

「試合前は、浦和はパスをつなげてくるので前から行くようにしましたけど、はまらずに回されて、そうなっても修正できなくてズルズル引いて失点したりと、悪い流れになってしまいました」

 山口監督はそのナイーブさの原因を精神面に求めているが、田中の反省の弁もそれを物語る。

「人にはどういうふうに行くか決まっていたので、あとは1対1のデュエル、球際のところで負けていました。戦術も大事だけど、気持ちでも浦和が上回っていました」

 いかにボールを奪うかは、もちろん状況に応じてだが、例えば左では、サイドバックの酒井宏樹に対しては3センターの左に入った平岡大陽が寄せていき、サイドハーフの松崎快はウイングバックの杉岡大暉がチェック、その裏を3バックの左に立つ山本脩斗がカバーするというシーンが目立った。

 この守り方に対して、浦和側からの狙いを明かしたのは、DF岩波拓也だ。湘南の5-3-2の守備陣形を破る方法の一つに、湘南の3センターのポジショニングを利用した。

「湘南の5-3-2の3枚のところがサイドに出てくることは、分析で分かっていました。だから、あえて守備に引き出すようなプレー心がけました」

 最初の失点シーンのきっかけになったのは、アレクサンダー・ショルツから江坂任へのくさびのパス。これは、3センターの右の茨田陽生と中央の田中の間に差し込まれている。江坂のポジショニングとショルツのパスセンスが見事だったからだが、結果的にはまさに相手の狙いを表現させてしまったことになる。

 後半開始からは米本拓司と永木亮太がピッチに入って、3センターを再編。米本が中央、永木が右で、田中は左に出ていった。ベテラン2人の投入で中盤を強化して、より強く、より激しくの意図は描かれたが、そこからゴールに向かうことはなかなかできなかった。

「ディフェンスラインが攻撃のときに思い切って縦パスをつけなかったり、自分たち(3センター)もポジショニングにもよりますけど、持ったときに前を見ることができなかったり、フォワードの動き出しのタイミングも含めて、どのポジションでも課題があります。そこができれば厚み出てくるし、結果が出ると思います」

 守備でも攻撃でも「課題ばかりが出た試合」と唇を噛んだ90分。田中は試合翌日から9日まで平岡大陽とともにU-21日本代表候補としてトレーニングキャンプに参加するから、また新しい刺激を得て、今季初勝利に向けてリフレッシュしたい。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE