FC東京が「再開幕」を果たした。新型コロナウイルス感染症で陽性者が出て7日間の活動停止。3月2日のJリーグYBCルヴァンカップ第2節アビスパ福岡戦で、ようやく今季2試合目を迎えた。アルベル監督が新しいスタイルを築く上で、センターフォワードに求めるものとは?

上写真=ルヴァンカップの福岡戦で再始動したFC東京。アルベル監督のスタイル構築を急ピッチで進める(写真◎J.LEAGUE)

「いまの時代では当然のこと」

 FC東京の再出発は、0-1の敗戦だった。3月2日、ルヴァンカップ第2節のアビスパ福岡戦は、新型コロナウイルス感染症の影響における活動停止を経て迎えた、いわば「再開幕戦」。ベストの状態ではないまま臨みながらも、勝利への意欲は失わずに90分を戦った。敗れたとはいえ、アルベル監督は「多くの決定的なチャンスを作った意味でも、負けにふさわしいプレーではなかった」と胸を張った。

 7日間の活動停止のあと、ほとんど時間がなかったが、「新しいコンセプトを加えるよりはフィジカルの回復、そしてプレシーズンに学んできたコンセプトを復習することに重きを置いてきました」とまずはベースを整え直すことに注力したとアルベル監督。J1開幕戦の川崎フロンターレ戦、この福岡戦とともに、新生チームにありがちなぎこちなさよりは、新しいスタイルを表現しようとする前向きな意欲が数字にも表れたという。

「フロンターレ戦と福岡戦に臨んだ結果、さまざまな数値で相手を上回っています。ゴールの数では負けたので試合に勝てていないのが現実で、もちろんそこは冷静にとらえなければなりません。しかし、負けてなおかつ、決定的なチャンスを作ることができていないのであれば問題ですが、そうではありません」

 好機を自分たちの力で生み出しているという事実が、苦境から脱する光になる。

 この2試合の違いはいくつもあるが、アルベル監督が採用する4-3-3システムで、センターフォワードには川崎F戦でディエゴ・オリヴェイラが、福岡戦では山下敬大が起用されている。

「2人とも質の高い選手です」とアルベル監督。「シーズンを通じてこの2人が大きく貢献してくれることは間違いありません」

 だからこそ、チームがベストコンディションに戻ってから、どのような基準で起用するのか、その哲学は興味深い。

「どちらを起用するかは、相手の特徴を踏まえて、ではなくて、その週の練習でプレーを見た際の私の感覚で選んでいくことになります。相手の特徴よりも、私自身が感じる感覚を重要視して選択していきます」

 逆にそのことが、競争の激しさを物語っている。どちらが出場しても、理想的なプレーが可能になると信頼しているからだ。作り続ける決定的なチャンスを仕留めるこのポジションに、どんなことを求めていくのか。

「まずは、相手の守備のバランスを崩す動きをし続けることです。もちろん、攻撃ではゴールを決めることが最も求める仕事になりますが、攻撃に奥行きをつくりだす背後への動きも求めています。そこに加えて、ライン間でボールを引き出す動きも求めますから、つまり、すべてを求めるということになります」

 そしてこのことは「いまの時代では当然のこと」だとも話す。モダンなストライカーであれ、と諭すのだ。

「完成度を高めるには、新しいコンセプトに取り組むことも大事ですし、選手の相互理解を深めてオートマチックにプレーして、成熟度を高めることも大事になってきます」

 2試合が中止になって開催日がスライドしたことで、3月に6試合、4月に8試合と連戦が続くことになった。疲労なども考慮する必要はあるが、それでもアルベル監督の言う「成熟度」は、試合をこなせばこなすだけ高まっていくだろう。まずは3月6日、アウェーのセレッソ大阪戦が待ち受ける。

写真◎J.LEAGUE