横浜F・マリノス戦の翌日、橘田健人が取材に応じた。チームは4年ぶりの逆転負けを喫したが、浮き彫りになった課題を整理し、26日の鹿島アントラーズ戦(J1第2節・@県立カシマサッカースタジアム)に向けて頭を切り替えていた。

上写真=横浜FM戦でアンカーを務めた橘田健人(写真◎小山真司)

難しい選択の連続だった横浜FM戦

 今季のリーグ戦初出場となった横浜FM戦は、橘田健人にとって難しい選択の連続だったかもしれない。まずは攻撃面。どこでプラス1になるかという選択。前半の32分だった。

 味方が左サイドでパス交換している中で、スルスルと前線に進出。自身のマーカーであるマルコス・ジュニオールが付いてこないと見るや前線まで躍り出た。そして登里享平からボールを呼び込み、ボックス左横からクロスをあげる。ファーサイドに詰めていた家長昭博のゴールをアシストしてみせた。

 宮城天、チャナティップ、登里は、それぞれマークに付かれていたが、橘田は大胆な飛び出しで前線で『プラス1』を生み、横浜FM守備陣の攻略に成功した。先制点が欲しい状況で前に出るという選択が吉と出たのだ。

 しかし後半、守備の局面で訪れた難しい選択では、『最良』を選べなかった。例えば1失点目。直前にドリブルで持ち上がったチャナティップが喜田拓也と畠中槙之輔に接触して負傷し、一時的にラインの外に出ることになった。一人少ない状況の中で中盤を守ることになったが、橘田はバイタルエリアを埋め、岩田智輝の攻め上がりを警戒した。本来マークすべきM・ジュニオールが右サイドへと流れていたことでの判断だった。それ自体に誤りではないだろう。ただ、フリーのM・ジュニオールから送られたクロスは頭上を越え、エウベルにヘディングを決められることになった。

 自陣に戻っていた家長、脇坂泰斗も含め、この場面では相手に厳しくいけず、構えてしまった。結果的にこの失点から相手の勢いが増していく。

「コンディション自体は、この試合に向けてしっかりやっていましたし、走行距離も出ていましたし、そこはよかったんですけど、プレーの内容としては、守備の部分で相手にスペースを与えてしまって、相手に多くのチャンスを与えてしまった。そこはもっとできたかなと思います」

 ボックス内の守備者の人数は足りており、点で合わせた相手のスキルもほめるべきだが、中盤の人数が一人少ない状況であってもM・ジュニオールにフリーで蹴らせてしまったことは悔やまれた。

 横浜FMはその後も喜田がたびたび前目のポジションを取り、M・ジュニオールが自由に動いて川崎Fの中盤の監視から逃れるプレーを繰り返した。その対応がうまくいかず、劣勢となってしまう。

「後半、自分たちのサイドバックが出て行ったときに、背中にボランチが入って来ていて、そこに自分が(守備に)出たらマルコスが空いてしまう状況でした。そこで守備の行き方を変えて、サイドの部分をワイドに見させたりとか、前半は中切りでやっていたんですけど、外切りにして、ハメていくということができれば。それを試合中にできればよかった」

 相手の変化にはもちろん気づいていたものの、試合の中で修正することができなかった。前半の立ち上がりは、内側に入ってくる相手のサイドバックをどう消すのかについて、3トップの距離を狭めるなど微調整し、中盤で誰が誰にどう付くかをはっきりさせて対応。効き目抜群の修正力を見せた。だが、後半は正解を選び続けることができなかった。

 ただ、試合翌日に行なわれた取材では「アンカーの脇を使われる場面も多かった。インサイド(ハーフ)をうまく動かして相手にチャンスを与えないように修正していきたい」と語るなど、すでに何が問題だったかを把握し、整理していた。同じ轍を踏まないことが、川崎Fが成長し続け、勝利を重ねてきた理由だろう。昨季の途中からアンカーに定着した橘田も、そのサイクルの中にいて自身を高め続けてきた一人だ。今回の問題の解決も当然、図っている。

「今年は1年通じて試合に出続けることが目標。その中でチームに欠かせない存在になりたいと思います。その中でも攻撃でも得点やアシストで絡んでいけるようになりたい」

 チームにとって不可欠な存在にーー。中心選手となる覚悟はできている。次戦は、鹿島とのアウェーゲーム。橘田は前節に出た課題を克服し、しっかり勝利をつかみにいく。