明治安田生命J1リーグで白星スタートを切った川崎フロンターレ。念願の3連覇へ向けてまずは3ポイントを手にしたが、その勝利の一員になったのが塚川孝輝だ。昨季は脳しんとうの影響で出場時間が少なくなった。その分もと、184センチのサイズを生かしてハードに守った。

上写真=塚川孝輝は昨年試合に絡めなかった分もと気持ちを込めて戦う(写真◎小山真司)

「自分がやってやる、という思いが強すぎて」

 2月12日の富士フイルムスーパーカップ2022、浦和レッズ戦では82分から、明治安田生命J1リーグ第1節のFC東京戦では62分から。塚川孝輝が出番を増やしている。

 昨年は試合中に脳しんとうを起こしたことが二度あって、ほとんど試合に絡むことができなかった。移籍1年目から苦しんだ。

「試合に出られない期間も考えてやってきて、サッカーと向き合うことが一番多かった1年でした」

 沈思黙考の時間で得た気づきを、2022年に還元させなければならない。ここまでの2試合では、守備を引き締めるタスクを体現するプレーを見せている。

「このチームはメンバーに入るだけでも難しくて、試合前になるとスタメンとサブメンバーでゲーム形式の練習をするんですけど、サブメンバーはスタメンに勝ってやるというこだわりを出していきます。スタメン組も負けるわけにはいかないですけど、自分もサブ組に入って『食ってやる』という気持ちです」

 そのトレーニングが、この2試合に生きている。浦和戦は0-2になった直後にピッチに入ったが、FC東京戦は0-0のタイミングで出番が巡ってきた。81分にレアンドロ・ダミアンが決めて先制し、その後の猛攻をしのいで逃げ切る展開の中、アンカーとして勝利の一員になった。

「なかなか試合に出ていない選手もいますけど、腐っている人はいないし、むしろいつチャンスが来てもいいように準備をするために、腐っている暇がないんです。自分もいまのこのチャンスを逃すと、ほかにもいい選手がいるので次のチャンスが来るのが遅くなるから、1回の練習や試合が本当に大事です」

 塚川とともにそれを体現したのが、遠野大弥だろう。FC東京戦で76分に投入されると、思い切りの良いシュートからCKを獲得、自ら蹴ってレアンドロ・ダミアンのヘッドに合わせた。決勝ゴールを演出してみせて、ダイレクトに勝利をもたらす活躍だった。遠野も「サブ組」でともに汗を流してきた仲。

「励まし合うというより、みんなで高め合っているという言い方が一番合っていると思います。この前は大弥が出て活躍したし、ほかの選手が出てもしっかりやってくれると思っています」

 塚川自身もその「ほかの選手」の一人だろう。FC東京戦では「自分がやってやる、という思いが強すぎて、もっと周りを見てできればよかった」と悔やみつつも、184センチのサイズを生かした高さとリーチの長さで、ボールを奪い取る強さを発揮した。

「キャンプではセンターバックやサイドバック、インサイドもやらせてもらっていました。奪い取りたいポジションはアンカーですけど、インサイドハーフでもゴール前に飛び込んでいく強度は特徴でもあるので、どこで出ても自分の良さを生かしたい。そしてやっぱり、止める蹴るを大事にしたいと思っています」

 昨年、なかなか試合に出られない時期に、このチームのすべての選手に求められる「止める蹴る」の向上にまっすぐに取り組んだのだという。

「基本技術を重点的にやっていました。まずは止められないと、試合に出ることができないから」

 その成果が勝利につながったFC東京戦は、一つのステップになるだろう。