川崎フロンターレが喫した黒星は、糧になる。2月12日に富士フイルムスーパーカップ2022で、浦和レッズに0-2で敗れた。鬼木達監督が敗戦から得たものは、改めての自信。18日の開幕戦となる「多摩川クラシコ」FC東京戦で、それをぶつける。

上写真=鬼木達監督は浦和に「消された」2つのポイントを、逆に強みに変える(写真◎小山真司)

家長昭博は止まらない

 シーズン開幕前に、浦和レッズが最高のレッスンを与えてくれたかもしれない。

 2月12日の富士フイルムスーパーカップ2022で、7分と81分に失点して川崎フロンターレは0-2で敗れた。その中に、鬼木達監督は手応えを見つけていた。

「いいシーンもありましたし、足りないところもありました。いずれにしろ、一から出直しですが、それでも積み上げてきたものに疑う余地はないとも感じました。開幕戦に生かすだけかなと思います」

 浦和が仕掛けてきたいくつもの策略には、例えば「消す」作業が2つあった。まずはアンカーに入ったボールへのアタック。リカルド・ロドリゲス監督や岩尾憲がそれを明かしている。

 前半はジョアン・シミッチ、後半は大島僚太、塚川孝輝が務めたこのポジションは、川崎Fの4-3-3システムにおいて、ボールを前後左右に動かす中継点。鬼木監督はアンカーとその周囲の選手の関わりに言及する。

「対戦相手との兼ね合いもありますが、アンカーの一人だけではなくて組み合わせのところが肝になると思っています。この前はジョアン、僚太、孝輝でしたが、チャンスをつかんでほしい思いがありました。いろいろな選手がいろいろなポジションをやらなければいけないと思っていて、それぞれのポジションで厚みが必要だと感じています」

 シーズンに入れば、浦和の戦い方を参考にするチームも出てくるだろう。でもそれは、今年に限ったことではない。ある種のデジャブ。

「だから、一人だけで解決することではないと思います。サポートは必ず必要ですし、自分たちが(相手の狙いを)理解していれば、ひっくり返すチャンスは多くあると思っています。どのゲームでも、そこを冷静に見極められるか。優先順位をしっかり持てればいいのと、一瞬一瞬で目を揃えながらできればと思います。きれいに崩したいだけではないですし、スペースをボールホルダーが見つけても受け手が見つけられていないこともあるし、逆もあるので、もう少し研ぎ澄ませたい」

 もう一つが、家長昭博への徹底マークだ。馬渡和彰が激しく足元に追い立てる守備を、酒井宏樹も称えていた。

「相手は彼のところでタメを作られたくないでしょうしね」

 鬼木監督はそう推測する。だからこそ、家長の進化を見て取る。

「今シーズンはトレーニングマッチも含めて、彼のランニングのところでは、一番走っていると言ってもおかしくないと思います。足元だけではないプレーが増えてきているので、止まらない可能性があると期待しています。もちろん、やれることは普通にやっていますが、いろいろなことにチャレンジしているし、アキだけではなくてすべての選手がそうしています」

 消しにくるなら、その逆を取る。または、別のところで勝負する。川崎Fの「相手を見る」の効用は、そんなところに真っ先に出る。

「アンカーを消しにくることもそうですが、いろいろなところを消しにきても、逆にそこから生まれるチャンスもあります。それを逃さないチームになりたいですね」

 家長に代表されるような、新しい「いろいろなこと」がかみ合ったとき、また新しい川崎フロンターレに進化するだろう。その物語が、2月18日の開幕戦、「多摩川クラシコ」FC東京戦から始まることになる。