王者・川崎フロンターレにとって強力な補強となったのが、チャナティップの加入だ。北海道コンサドーレ札幌で披露してきた攻撃力が、チャンピオンチームにどう組み込まれていくかは興味深い。沖縄キャンプで「フロンターレ色」に染まるタイの英雄の今季が楽しみだ。

上写真=チャナティップの合流が生配信されるなど、注目度は最高潮だ(素材提供◎川崎フロンターレ/写真◎スクリーンショット)

「違いを見せられる選手」と鬼木監督

 チャナティップといえば、速さと技術の融合体。158センチと小柄だが、逆にそのサイズを生かすような俊敏なステップワークと一瞬のスピード、細やかなテクニックでゴール前の最も重要なエリアをすり抜けていく。

 川崎フロンターレでそのスペシャリティーを生かす場所は、いくらでもある。

「みんなでボールを蹴ることができて幸せ」とチャナティップ。1月26日に初めてチームに合流した模様がクラブ公式のインスタライブで配信されると、最大で2300人以上が見守った。タイの英雄だけに、コメント欄はタイ語の書き込みで埋め尽くされた。28日には同じくインスタライブでプロモーション素材の撮影にも密着し、恒例のバナナやアボカドの被りものを身につけて一足早くピッチ外で「川崎Fデビュー」、おちゃめな仕草でさっそくファン・サポーターを虜にした。

 昨季は左ヒザ、左内転筋などを痛めて、23試合の出場にとどまった。鬼木達監督も心配するのはコンディションの面。

「昨年ケガが多かったので、コンディションのところは戻したり整えたりしていかなければいけないですし、(タイ代表のスズキカップで)1月1日まで試合をしているので、こちらが状態を見極めなければと思っています」

 まずは慎重に戦う体を取り戻す作業を進めていく。チャナティップ自身も焦りはない。

「コンディションを少しずつ上げていくのも練習の一部ですし、今後同じようなケガをしないことが今年の目標でもあって、調整していきたい」

 川崎Fが狙うJ1での3連覇、そして悲願のACL優勝に向けて、その攻撃力がものすごいパワーをもたらしてくれるのは間違いない。ボールテクニック、判断力、フィニッシュワーク、チャンスメークとすでにJリーグでも屈指のレベルにあることは北海道コンサドーレ札幌で証明していて、あとはそれを「フロンターレ色」に染めるだけだ。

 鬼木監督はもちろん、期待を隠さない。

「力を発揮してくれれば競争に入ってきますし、チームの力になります。得点もそうですが、攻撃のアクセントとして違いを見せられる選手だと思っています」

 川崎Fの自慢は、なんと言っても魅力的な攻撃。チャナティップの存在がさらにその幅を広げ、ゴールのバリエーションを増やすことが想像できる。

「前線ならどこでもできるのかなという印象はあります。4-3-3であればインサイドハーフもウイングもできるでしょうし、違う形で例えば4-2-3-1でも4-4-2でもトップ下も左右でもできると思います。シャドーもやっていたと思うので、攻撃のところはある程度できるでしょう」

 鬼木監督にとっても「全戦術対応型」の貴重なピースを手にしたことになる。

 4-3-3を例に取れば、インサイドハーフは大島僚太、脇坂泰斗、橘田健人、瀬古樹、小塚和季、遠野大弥らがいて、ウイングでは小林悠、遠野、知念慶、マルシーニョ、宮城天、永長鷹虎、家長昭博などもプレーする。そこにチャナティップが加わるのだ。対戦相手からすれば厄介なことこの上ない。

「みんなの練習の姿勢はさすがチャンピオンだと思います。今後、難しい競争が待っていると思う」

 チャナティップはあえてそこに飛び込んだ。目標は「チャンピオンになること」と明快だ。

「チャンピオンになれるかなれないかは、自分の力を見せてフロンターレの一部になることにかかっています。レギュラーになれるように頑張らなければと思っています。かなり期待された移籍だと思うので」

 高ぶる気持ちは隠さない。

「みんな一つのポジションで動きが早い。チームの中の競争率がすごいと思います。でもここに来て負けるわけにはいかないし、頑張らなければいけない」

 その笑顔であっという間にファン・サポーターの心を鷲づかみにした。今度はピッチの上で魅力的なプレーを見せて、もっともっと愛されることになるだろう。