名古屋グランパスからFC東京へと移籍した木本恭生。センターバックとボランチをこなせるユーティリティー性が頼もしいが、本人はセンターバックで勝負したいと公言する。アルベル監督が求めるセンターバック像を確立するために、沖縄キャンプで鍛える日々だ。

上写真=木本恭生はFC東京でセンターバックとして勝負する(写真提供◎FC東京)

森重は「簡単に越えられる壁ではない」

 木本恭生はこれまでプレーしてきたセレッソ大阪でも名古屋グランパスでも、センターバックとボランチの両方でプレーしてきた。どちらもこなすことができる能力はチーム戦術の幅を広げるために大きな武器となるが、戦いの場をFC東京に移した今季は、センターバックで勝負することを宣言している。

「ボールを愛する」という表現でスタイルを説明するアルベル監督の戦い方では、センターバックに求められる役割は多岐にわたる。特に、GKとともに攻撃のためにボールを運び出す「最初の一歩」は重要だ。

「センターバックのポジションでは、ボールを持つ時間が長くなるスタイルだと思います。自分たちが早くボールを回したほうがいいのか、しっかりボールを持って前に運びながら時間を作るのか、その見極めがすごく大事だと感じているので、そこを意識しています」

 センターバックの判断一つで、攻撃のスピードやテンポをコントロールすることができるのだ。やりがいがある。

「魅力的なサッカーを目指している印象があって、練習試合でいいところも出ましたし、手応えを感じています」

 沖縄キャンプで実戦形式も交えながら鍛えていて、まずは上々のスタートを実感している。

 FC東京のセンターバックには森重真人という大黒柱がいる。その存在へのリスペクトを隠さない。チームとしては一緒に戦いながらも、でも個人としてはそのレベルを超えなければならない。

「なかなか簡単に越えられる壁ではないと思っています。難しいですけど、自分の特徴でもある足元の技術でしっかりと森重選手以上のものを出していかなければいけないと思います」

 ボールをていねいに扱う技術は、C大阪でも名古屋でも証明してきた。C大阪時代にはロティーナ監督の下でポジションを大切にする戦いを学んできた。アルベル監督のそれとは細かいところで異なるものの、「ポジショニングを大事にすることで、相手のプレッシャーの向かい方を考えて、ボールのないところで周りとの距離感や立ち位置を把握する」ことが重要だとベースは身につけている。

 森重とともに戦い、森重を超えてゆく。東京での新しい戦いに、木本は全力で臨んでいる。