ファジアーノ岡山から京都サンガF.C.に加わった井上黎生人。J3ガイナーレ鳥取で6年戦ったあと、岡山でのプレーで実力を見せつけて、1年でJ1への、京都への移籍を勝ち取った。岡山では全試合フルタイム出場を成し遂げたセンターバックが、新たな挑戦に身を投じた。

上写真=井上黎生人は折り目正しく、理路整然と意欲を伝えた(写真◎スクリーンショット)

イニエスタと戦うために

 2021シーズンのJ2リーグにおいて、全試合フルタイム出場を果たしたのは3人だけ。そのうちの1人が井上黎生人である。しかも、常に危険にさらされるセンターバックというポジションでは唯一の達成で(ほかは町田GK福井光輝、北九州MF高橋大悟)、シーズンを通したコンディションの維持や累積警告もなくクリーンにプレーしたことが評価される。

「チョウ監督からは、最終的には(岡山が)アウェーで対戦したときよりもホームのときに成長していたから評価してもらった、と聞きました」

 昨年のJ2第40節で、岡山は京都と0-0で引き分けている。この試合に勝てば昇格を決めることのできた京都を相手に、井上を中心とした岡山の守備陣が対抗して阻止した。ハイインテンシティなゲームで完封したことで、目の前で認めてもらったのだ。

 その京都に移籍することになったが、チョウ・キジェ監督とは鹿児島実業高時代にも縁があったという。当時率いていた湘南ベルマーレの練習に井上が参加していた。鳥取時代の練習も見てもらっていたという。

「僕の力不足でオファーには至りませんでしたが、いつかまた出会って、チョウさんの下で成長したいという気持ちが心の中にありました。楽しみですし、1週間練習しただけでもたくさん発見がありました」

 発見の中にはもちろん、弱点も含まれていた。「全部が短所で、全部が長所」だという。

「身長はそんなに高くないし、スピードも速いわけではないので、どうやったら活躍できるか、上に行けるかと言ったら、総合的に全部上げていかなければいけない。総合値で全部をふくらませていくことを意識しています。その意味では、全部が短所で全部が長所です」

 全試合フルタイム出場を達成したという事実こそ、総合力の高さを示すものではないだろうか。

「もともとカードをもらうスタイルではなくて、僕のいいところでもあります。ただ逆に、ファウルでも止めないといけないという場面も何度かあったとは思っています。もちろんそれでも、ファウルをしないで止められる選手にならなければいけないです。センターバックは全試合に出なければいけないと考えています。センターバックが安定すれば、チームが安定するので」

 ストロングポイントとしてJ1で披露したいのが、シュートブロックとカバーリングだ。

「シュートブロックやカバーは強みですが、J1ではそこまで行かせてもらえないという間合いも出てくると思います。読みの力、危機察知能力を上げていかないと頭がついていかないし、休憩できないのは天皇杯でも感じました。そこは楽しみながらやっていきたいと思います」

 祖母がスペイン人のクオーター。スペイン語の習得も進めているという。J1ではヴィッセル神戸にアンドレス・イニエスタがいる。

「ぜひお会いしたいですね。そのためにもまずはスタメンを勝ち取るためにがんばります」