北海道コンサドーレ札幌は7日、三上大勝GMがオンラインで取材に応じ、所属するタイ代表チャナティップについて、川崎フロンターレに移籍することでクラブ間合意に達したと明かした。昨年末に打診を受け、一度は断ったものの、再度のオファーで決断に至ったという。

上写真=川崎F移籍が秒読みとなっているチャナティップ。すでにクラブ間では合意している(写真◎J.LEAGUE)

日本では考えられない金額

 タイ代表で、Jリーグでも有数のテクニックを誇る札幌のアタッカーがJ1優勝チームに移籍することになりそうだ。現在はクラブ間で合意に達し、川崎Fとチャナティップ本人が契約について詳細をつめている段階。一部報道が出たことを受けて、札幌の三上GMが7日、オンラインで取材に応じ、今回の移籍に関する経緯を説明した。

「12月23日に川崎Fの方から第1回目の打診がありました。そのとき、われわれに対するリスペクトを含め、その思いをお聞かせいただきました。しかしわれわれのクラブとしては違約金等々を含めて、ちょっと難しいと判断し、お断りさせていただきました。一方で、クラブの方針としてどんな些細なことも選手に開示させていただいています。本件においてはチャナティップにも連絡しております。当初、チャナティップの方からも『このチャンスを生かしたい』という話がありました。我々としてのこれからのビジョン、チャナティップ自身の価値を含め、誠意あるオファーだと思うけれども、クラブが承認できる内容ではないと説明しました」

 昨年12月23日の最初の打診の段階では、交渉は合意に至らなかった。クラブとしてチャナティップ本人にも説明し、理解を得たという。だが、28日に川崎Fから2度目のオファーを受けることとなった。

「私自身、Jクラブに携わって30年くらい経ちますが、私の知る限り、国内における移籍金として過去最高なんじゃないかと思われるような金額提示を受けました。それを受けて、クラブ内で議論し、もう一度、タイ代表選手としてシンガポールで行なわれているスズキカップ(東南アジア選手権)に出場中のチャナティップとコンタクトを取りました。その際に、23日時点で、本人の『できれば行きたい』という意思を確認していましたが、28日の話の中では金額について本人から『すごく大きなものをコンサドーレに残していける』と聞いていると。その上で『自分としても新たなチャレンジ。これが最後のトライになるかもしれない』と強い意思を聞きました」

 28日の提案を受け、本人と話し、その上でクラブ内で議論し、最終的には12月30日に川崎Fに連絡。クラブ間合意に至った。現在は、契約の詳細についてチャナティップ本人と川崎Fで話し合っている段階という。17年夏にタイのムアントンから期限付き移籍で加入し、翌年完全移籍。この5シーズンはまさに札幌の顔でもあった。J1では115試合に出場し、14得点・15アシストを記録している。

 具体的な契約金は明かされなかったが、今回の移籍についてミハイロ・ペトロヴィッチ監督も引き留めたいものの、「日本では考えられない金額、信じられない額」と話していたと三上GMは説明した。チャナティップは札幌の攻撃の中心の一人であり、戦力ダウンを心配する声もあるが、新シーズンに向けて「現有戦力をすべて残す」ことを念頭に強化を進めており、チャナティップは引き留めることができなかったものの、その他の選手は維持できる見込みという。その上で「きちんと整理した上で補強をしていきたい」とも話した。すでに得点力不足を解消するために興梠慎三を獲得しているが、さらなる補強も見据えているようだ。とはいえ、現状、新型コロナウイルスの影響もあり、新規外国籍選手の獲得は難しい状況。今後の動向が注目される。

「移籍が正式に決定すれば、サポーターには非常に寂しい思いをすることになると思いますが、ここまでサポーター、パートナー企業の方、みなさんと一緒になってこのプロジェクトを支え、育んできたことの成果が、Jリーグのチャンピオンチームから評価をいただいたことにつながったと思っています。それは一つの成功、結果になると思っています」

 今後も引き続き、クラブを発展させ、チームを強化していくと三上GMは強調。チャナティップ移籍で陣容変更を余儀なくされるが、それは札幌が新たなステップに進む契機ともなるかもしれない。